「啄木鳥」 惨事便乗型の北海道地震「対策」(下) 石炭火力で負荷追従運転できず? 採用しなかった再生可能エネルギー

ブラックアウト後、原因についてマスコミでは神輿と担ぎ手による説明がなされた。神輿は電力の使用量、担ぎ手は発電所とされ、神輿と担ぎ手のバランスが取れていた時に、担ぎ手のほぼ半分が停止した。こういう場合、神輿を軽くして(電力使用量を減らして)担ぎ手とのバランスを維持すれば担ぎ続けることができる。しかし電力使用量を減らせなかったので、担いでいた他の発電所も安全装置が起動して停止、ブラックアウトになったというものだ。

何となく分かったような、違うような気がするのは、一点目に神輿を軽くすることができなかった理由に対する説明がないという疑問だ。時間は午前3時過ぎである。全道の工場や企業がフル稼働し、家庭でも大量の電気を使用していた時間ではない。電力使用量を減らせなかった合理的な説明がなければ、何かことが起きた時に日本中でブラックアウトが発生、市民は無策な企業の下で暮らし続けることになる。また担ぎ手についても、皆同じレベルを想定しているが、それでいいのだろうか。

▽危険な「ベースロード電源」論

またブラックアウトが発生したことについて、苫東厚真火力が全道の電力需要の半分をまかなっていたという一極集中が大きな要因との意見がある。こうした意見によると、今後同様な事態の発生を避けるため、いくつかの箇所で少なくとも総需要の10%程度の出力の発電所を分散配置するべきという。このことは電力各社が原発必要性の理由に挙げてきた「ベースロード電源」論の根拠を否定するものでもある。電力各社は総出力の20〜30%を一定の出力で発電する原発に求め、それをベースロード電源とする事で安定供給できると主張している。しかし今回、総需要の10%の容量の発電機が壊れると周波数が下がり停電する可能性があること、場合によってはブラックアウトしてしまうことは以前から専門家の間では知られていたことが明らかになった。つまり、総出力の20〜30%を占める原発をベースロードとし、それに依拠すること自体が原発が緊急呈した場合などで危険となってしまう。

 北電はかねてから泊原発再稼働に前のめりになっており、石狩湾港に建設中のLNG火力発電所の稼働も予定より1、2年遅らせることを昨年表明していた。しかし検証されなければならない最大の問題は、再生可能エネルギーに対する対応である。

週刊金曜日9月14日号の「酷薄なエネルギー政策を露呈」を書いたフリーランス記者・平田剛士氏によると、北海道は特に過疎地で大型風力、太陽光、バイオマス発電所の建設が進み、資源エネルギー庁のまとめでは2017年末現在の再生可能エネルギー施設の導入容量は苫東厚真とほぼ肩を並べる計138万キロワット。しかし「ブラックアウトのさなか、これらの施設は軒並み空転、あるいは停止していたとみられる」と指摘している。

▽一極集中から分散型電源を

 今回の地震で損壊した苫東厚真火力は地震発生時の見立てよりも被害が大きかった。最初に停止した2号機と18分後に停止した1号機でボイラー内部の管が損傷。配管から蒸気が漏れた。一番大きい4号機(70万キロワット)ではタービン発電機で火災が発生した。

 発電所は厚真町にあり震度は7から6強程度だったとみられている。しかし施設の耐震震度は5。立地ごとに異なる周辺の活断層の評価も行っていない。道新によると、発電機など火力発電所に求められる全国一律のルールによるもので、活断層の評価は必要ないとされており、北電は断層を評価した耐震設計を行っていないという。地震後の空からの映像では発電所敷地内に液状化らしい痕跡がみられ、再稼働にあたっては活断層を含めた地盤の検証が必要になりそうだ。

 この苫東厚真火力の問題点の一つは日本では少ない石炭燃焼火力という点だ。もともと北海道は産炭地であったという経緯から石炭火力の割合が高いが、石炭火力は負荷追従運転が苦手で出力調整運転もあまり行わないと指摘する専門家もいる。急な出力の変化に弱いのだ。出力調整余力の小さい石炭火力が多かったことが、送電網の破綻に繋がったとも考えられる。この点は原発と似ている。特に日本の原発は出力調整運転の認可を受けていない。

 泊原発は東電福島第一原発爆発事故後、運転を停止しており、核燃料はプールの中に入っていた。停止してかなりの時間を経たので、使用済み核燃料の温度もかなり低下しており、外部電源を喪失してもプールの温度は急激には上昇しない状況だったのが幸いだった。

 しかし仮に定格出力運転中であったなら、たとえ泊原発のある一帯が震度2であっても、緊急停止した可能性が高い。北電が明らかにしていない全道停電に至るプロセス、特に苫東厚真火力のすぐ側にあって震度7の地震の影響を受けた可能性の高い変電所の状況が分からないとなんともいえないが、道内の送電網の破綻が他の発電所への破壊に繋がらないよう発電を停止させたとしたら、泊原発も当然緊急停止したはずだ。結果としてブラックアウトに繋がる。また停止しなかった、あるいはできなかったら原発の暴走事故になりかねない。外部電源喪失後、速やかにディーゼルエンジンによる非常用電源起動がなければ福島の二の舞である。

こうしてみると第一に並外れて大きな発電所を造るのではなく、分散型の発電システムにした方が危険性も少なく、立ち直りも素早いのではないだろうか。その際には、事後の対応が大変な原発や石炭火力ではなく、極力再生可能エネルギーへの転換が求められる。