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「ブックレビュー」 『告発〜日本では原発を再稼働してはいけない3つの理由』 蓮池透著

蓮池透氏は元東京電力の社員というよりも、拉致被害者家族会の元事務局長としての方が有名だが、日本原燃(株)に出向しておられた時に東京事務所で何回かあいさつしたことがある。あまり人付き合いのよくなさそうという印象だったが、本書でもその辺りのことは自認しているようだ。ただ、東京事務所時代の職場環境は良かったらしい。しかし東電の原子力部門はどうだったのか。本書は30数年にわたって原子力部門専門に働いてきた筆者が原発への徹底的な批判と、古巣の東電に対する「宣戦布告」ともいえる書物だ。

蓮池氏はタイトルになっている「日本で原発を再稼働してはいけない3つの理由」として、①核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場がない②「世界一厳しい基準」は大嘘である③避難計画の不備は人命軽視である〜を挙げているが、むしろ今の時点で最も重要なのは、東電が再稼働を目指している柏崎刈羽原発についての具体的な記述だと思われる。

▽改良型炉の危険なポンプ

柏崎刈羽原発6、7号機は「改良型沸騰水型軽水炉(AWBR)」とされているが、計画時点から既に東電(さらには原子力ムラ得意の)「呼び替え」があったという。最初は「新型」と称したが、従来と異なる点が多々あるため、「新型」と表記すると、様々な議論を呼ぶ恐れがある。それで「改良」としたという。

では,どんな問題があるのか。まずハードの面では「インターナルポンプ(RIP)の採用」を指摘する。このRIPは「ABWRで最も重要な機器であり,従来型との最大の相違点である」という。これまであまり問題視されていなかった印象があるが、蓮池氏によると、このRIPは従来型では原子炉圧力容器の外部に設置されていた「再循環ポンプ」に代わるものだという。再循環ポンプは配管で内部のジェットポンプと結ばれていたのに対し、インターナルポンプはポンプの羽根(インペラ)の部分を圧力容器の中に入れ、水中モーターで駆動して原子炉内の水を循環させている。従来の再循環ポンプであった配管破断という「アキレス腱」の一掃になると東電は主張しているが、筆者は多くの疑問があると指摘する。

インターナルポンプ採用の2次的影響として非常用炉心冷却系(ECCS)も規模が縮小され、原子力圧力容器および格納容器も小型化した。インターナルポンプの落下(脱落)はECCSでは全く対応できないとも指摘する。仮に圧力容器の下部に10台設置されているRIPの1台でも落下すれば壊滅的な破壊につながりかねない。さらに6,7号機が設置されている建屋は岩盤の状態が悪いことから、原子炉は異例の人工岩盤(マンメイドロック)で支えられており、1990年代初めに行われた安全審査でも3点が指摘されていたという。それらは今日どうなったのだろうか。新規制委員会はどんな評価をしているのだろうか。「電力会社に甘い」とされていた当時の安全審査でも「条件付き審査合格」だったのだから、「世界一厳しい」(安倍首相)審査基準であれば、問題点をクリアできない限り合格とできないはずだが。気になるところだが、指摘されている建設当時のソフト面での問題を読むと、心底心配にならざるを得ない。

▽エンジニアとしての矜持

本書の意味する点が重大なのは、蓮池氏は原子力のエンジニアであり、長らく実際に現場で業務に携わっていたという点である。外から見ただけで会社の意向から離れられない原子力学者は、本書で指摘されたハード・ソフト両面の指摘にきちんと答えられるかどうか。

その蓮池氏も東日本大震災と東電福島第一原発事故直後の2011年に著した『私が愛した東京電力』(かもがわ出帆)では、本書ほど厳しい批判をしていなかったという。同書を読んでいないが、本書の「はじめに」の冒頭で違いを示している。

 それによると「同書で『事故の起きたいまこそ、冷静になり、推進派、反対派の垣根を超えて、今後のわが国の原発政策・エネルギー政策を原点に戻り議論していくときではないでしょうか』と記したが、今は違う。決して感情論でも、ポピュリズムを煽るわけでも、またイデオロギー的でもなく、理性的に考えれば原発の再稼働はあり得ないことだ」と、エンジニアとしての矜持が本書執筆の動機という。この7年間に何が変わったのか。北海道では、北海道電力のミスを隠蔽した上で、地震の被害者を利用するかのような泊原発再稼働が声高に言われ出している。今こそ蓮池氏の言葉に耳を傾ける時だろう。

▽東電の隠蔽歴史

北海道電力も泊原発では隠蔽やごまかしを指摘されているケースがいくつかある。しかし蓮池氏によると、東電の隠蔽体質はレベルが違う。今では忘れられているケースも含めて、本書に列記されている隠蔽を再掲しておきたい。

○1978年1月11日、福島第一原発3号機で制御棒の脱落により日本初の臨界事故が発生したが、これを29年後の2007年まで隠蔽。

○1989年1月、福島第二原発3号機で、何回もの「原子炉再循環ポンプモーター振動大」の異常警報を無視し、運転を継続したため、原子炉再循環ポンプ内の部品が破損し炉心内に大量の金属粉が流入した。異常を無視し運転継続したことが、後日判明した。

○1992年2月、福島第一原発1号機で、タービンバイパス弁の異常により原子炉が自動停止したが、通産省(当時)へ報告しなかった。

○1992年5月、福島第一原発1号機で、定期検査期間中に行われた原子炉格納容器の漏えい率検査に際して、圧縮空気を原子炉格納容器内に注入することにより漏えい率を下げる不正が行われていた。

○2002年8月、福島第一・第二原発、柏崎刈羽原発で1980年代後半から1990年代前半にかけて定期検査中に自主点検作業を実施した。その際に、原子炉圧力容器内部の炉心シュラウド(原子炉内部のステンレス製の隔壁。燃料や制御棒を就農する)などに、ひび割れがあることを発見しながら、国への報告がなされなかった。29件のデータ改ざんの不正のかの言う性があると発表された。後日、16件が不正とされた。

○2007年7月16日、新潟県中越沖地震の際、柏崎刈羽原発3号機変圧器から出火した。自営消防隊による消火に失敗した後に、消防署に通報した。これについて、地元自治体への連絡が大幅に遅延した。

○2011年3月、規定の頻度を超えても保守点検を実施していない点検漏れの機器が見つかった。最長で11年間にわたり点検していない機器があったほか、簡易点検しか実施していないにもかかわらず、本格点検を実施したと点検簿に記入していた事例もあった。

以上『告発〜日本では原発を再稼働してはいけない3つの理由』P23〜25より。