啄木鳥 「自分で放射線を調べて子ども主体の対策を」 シャローム災害支援センターの吉野裕之さんが訴え

東京電力福島第一原発事故後、自ら被災しながら福島市で避難者を支援するとともに、歩道や公園の放射線測定を続けているNPO法人シャローム災害支援センター(福島市)の吉野裕之さんがこのほど横浜市内で開かれた「ふくかなトライアルセミナー」で講演し、事故後福島市内で継続している路上の放射線測定結果から「福島県や市など行政は平均値を示しているが、実際に子供たちが歩いたり遊んだりするところでは場所によって線量が異なる。具体的に自分たちが生活するところの線量を調べて、自分や子供たちの身は自分たちで守ることが必要」と訴えた。

 

▽1カ月で1.3ミリシーベルトの歩道も

吉野さんらシャロームは原発事故後、ベビーカーや自転車に測定器をつけた「ホットスポットファインダー」を使って、路上や子供たちが遊ぶ公園の放射線測定してきた。国の測定基準は知面から1メートルの高さだが、吉野さんらがホットスポットファインダーで測定する放射線は地面から1メートル、50センチ、10センチの3種類の高さ。1メートルという基準は元々米国人成人男性の平均生殖器位置から策定されたもの。核戦争を戦う「アトミックソルジャー」のための基準だった。成人男性の半分ということで子供が50センチとなったが、いずれにせよ日本人の平均からよるとかなり高い。それ以上に、乳幼児が歩いたりベビーカーに乗って道を移動するときの高さは50センチよりも地面に近いが、行政は基準外として測定していない。

吉野さんらが測定を続けてきた結果によると、除染が進んだり降雨で放射性物質が洗い流されたりして硬いアスファルト舗装の表面では線量が低くなっても、歩道に多い柔らかいアスファルト舗装では線量が高い。硬いアスファルト上では環境基準を下回っていたのに、すぐ近くの柔らかいアスファルト舗装上では放射線管理区域の基準である毎時0.60マイクロシーベルトを上回っているようなところがあったという。これは1カ月で1.3ミリシーベルトを超す数値だ。

また測定の高さによる線量の違いが明らかに。これまでの測定では、地上10センチの線量は平均で1メートルの2.3倍高いことが分かった。さらに自宅の部屋によっても放射線量が異なる。特に寝室での線量が課題だが、例えば家具の位置を少し変え、窓際に分厚い漫画本を並べるだけで線量が半減したケースもあったという。

 

▽危険な樹木の樹皮周辺

吉野さんが講演で特に懸念を表明したのは、木々の樹皮に付着している放射性物質。元々樹木の根本は根がじゃまになって表土の除去が十分行われていないため放射線量が高くなりがちだ。しかし樹皮に付着しているセシウムボール(ホットパーティクル)は直径2~2.6ミクロンと極めて小さく、薄く張り付いているのでガンマ線を測ると高い数値にはならない。しかし個々のボールの線量は高く、木登りなどをして吸い込むと内部被ばくの危険性が高まると警告している。

原発事故から6年以上経って、いまだに生活を脅かしている放射能。帰還者も帰らない

人も、除染の実態を把握する必要があるという吉野さんは次のような教訓を訴えている。

①事前の知識の取得②放射線モニタリング③日ごろから風向きの確認④ガソリンなどの備蓄⑤安定ヨウ素剤の確保(携行)⑥緊急時の情報収集(リテラシー)⑦日ごろからの地域間交流(避難先確保)⑧平均値ではなく、個別の数値で判断。

このうち安定ヨウ素剤は行政から配布されるのを待つのではなく、自分で入手を試みるべき。アマゾンでも通信販売しており、いざという時に備え絶えず携行することが身を守る手段と指摘した。

 

(2017年5月22日)