「啄木鳥no.40」トモダチ作戦の米兵士が被ばく、400人超す原告団結成 小泉元首相が講演会で報告

 オバマ米大統領は5月27日広島を訪問、71年前の原爆投下について謝罪はしなかったものの「核なき世界」の追求をあらためて宣言した。オバマ演説で際立ったのは、犠牲者への言及で「10万人を超える日本の男性、女性、子どもたち」に続いて「多くの朝鮮半島出身者、捕虜となっていた十数人の米国人を含む犠牲者を悼むため広島に来た」と述べたことだろう。日本は政府だけでなく、国民も、強制連行してきた朝鮮人の被ばく者や米兵捕虜に対してほとんど関心を示して来なかった。

▽「鼻血が出る」と訴え

 外国人被爆者に関心を示して来なかったのと似た状況が、東日本大震災と東電福島第一原発事故への救援活動で被ばくした米軍兵士への対応にある。米空母ロナルド・レーガンが2011年3月、福島から三陸沖に出動し、ヘリで被災地への救援物資輸送や、海上での救難活動をした。陸域での救援活動を含めた米軍の「トモダチ作戦」である。

 その時に被ばくして体に変調を来したとする元兵士たちが東電などを訴える訴訟を起こしたという話は、日本でも簡単に報じられていた。しかし、ほとんど関心を呼んでいなかった。それを一挙にひっくり返したのが小泉純一郎元首相だ。

 小泉氏は5月26日、東京の朝日ホールで「日本の進むべき道」と題して講演し、5月中旬米国に行って被ばくを訴える元兵士らと直接会って話を聞いたことを披露した。小泉氏は元兵士らと会った後、現地で記者会見したが、日本のマスコミだけでなくCBSやFOXなどの米国のテレビ局も取材し報道したという。

 小泉氏によると、被ばくを訴えている元兵士らは「鼻血が出る」「膝が痛くて動けない」などの症状を訴え、身体の不調のため軍隊から除隊せざるを得なくなった状況などを説明。「トモダチ作戦」の期間、艦内のガイガーカウンターは鳴り放しで、兵士たちがスマホなどで撮影したガイガーカウンターの音や「放射能だ」などと叫ぶ声が入った動画も見せられたという。しかし放射能に関する情報はなく、誰も防護服を着なかった。米空母は海水を真水化してシャワーに使うだけでなく、飲料水や料理に使っており、「外部被ばくだけでなく、内部被ばくの双方の被ばくをしている」と小泉氏は推測している。

 兵士たちの訴えに対して、米軍病院の医師たちは「原因不明」として放射能汚染による健康被害を認めず、除隊を余儀なくされた元兵士たちは高い医療費が払えないため病院にも通えてない。元兵士たちの訴訟は8人の原告から始まったが、5月26日には原告が400人を超した。トモダチ作戦には2万人を超す米軍兵士が動員された。さらに原告が増えると予想される。原告側の弁護士によると、既に7人が白血病で死亡している。

 ロナルド・レーガンが被ばくしたのは2011年3月14日から15日にかけて起きた原発水素事故の放射能プルーム(雲)が福島から三陸沖に流れたためだろう。京大原子炉実験所の今中哲二・前助教によると、一連の福島原発事故で飛び散った放射能は陸域に流れたのが2割程度、残る8割は海域に流れた。事故後、何人もの専門家が「海域に(放射能が)流れて、不幸中の幸いだった」というような発言をしていたが、ロナルド・レーガンとそこで活動した兵士たちにとってはまさに不幸だったわけだ。

▽国内にも少なくない被ばく被害者

 このことは対岸の火事では決してない。今中・前助教は2011年3月末、福島県飯舘村で放射能を測定したが、そのデータを分析すると3月15日当時は1時間あたり150~200マイクロシーベルトという、とんでもない放射線が降り注いでいたことになる。2週間で50ミリシーベルトを超す(一般人の年間被ばく限度は1ミリシーベルト)。にもかかわらず、飯舘村では当時、原子力や放射線の専門家たちが現地で「安全」を宣伝していた。飯舘村全村避難の直前のことだ。

 飯舘村の高濃度汚染は事故から2週間ほど経って明らかになったが、宮城県から北関東の茨城、栃木県などにかけて汚染度の高い地域が点在する。しかし事故当時、同心円での避難ばかり強調され、こうした地域に目が向けられなかった結果、放射能への警戒もなく雨の中を歩いていた人は少なくないはずだ。

 福島県内で小児甲状腺がん患者が急増していることに対し、福島県や福島県立医大などの「専門家」は原因不明として、放射能との関係を否定しているが、ロナルド・レーガン元兵士たちの裁判はそうした「原因不明」を打ち破る可能性がある。

 日本国内の被ばくについて、今中・前助教は「福島県内だけでなく、放射能が降った地域、さらには日本全国の調査を行うべきだ」と主張している。すでに東北各地で焼却処理したゴミや牧草から限度値を超える放射能が検出されている。国や行政の影響下にある日本医師会や大学の医療機関では検査は不可能かもしれないが、専門知識を持ち、良識のある民間の医師たちが何とか立ち上がることはできないのだろうか。

(2016/05/29)