福島で小児甲状腺がん多発の恐れ

①福島県県民健康調査による小児甲状腺がん発症状況
②津田敏秀岡山大教授によるベラルーシでの小児甲状腺がん発症状況
テレビ朝日系列の報道ステーションが原子力ムラから「攻撃」され、スタッフが窮状を訴えているという。理由は3月11日の番組内容だ。福島県内の子供たちに際立って甲状腺がんが多発しているが、福島県や関わっているガクシャたちは口をそろえて「放射線の影響は考えにくい」と否定している。しかし報道ステーションは大手メディアとして初めて、福島県や福島県立医大などの主張に根拠がないことを暴いた。旧ソ連チェルノブイリ原発事故では、事故から7、8年経って から甲状腺がん発症者が多発したという。
11日には参議院議員会館で国際NGO、FoEJapan主催の「311シンポジウム福島を忘れない」が開催され、定員200人の会場に400人が詰めかけた。ここでも福島県内の小児甲状腺がん検査の問題が指摘され、皆熱心に聞き入った。安倍政権や福島県、県立医大などは5年の節目で事態を収束させようとしている中、福島県の小児甲状腺がん多発の記事は大手マスコミではほとんど取り上げられてこなかった。報道ステーションが先駆となって全容解明に進むことが出来るだろうか。
▽30万人中166人が甲状腺がんと判明
福島県は事故後、放射線被ばくで発症する恐れのある小児甲状腺がんを県立医大だけが実施するという手法で検査している。これを基に、東大や長崎大の影響の強い専門家による県民健康調査検討委員会が県民調査結果をとりまとめている。検査は「先行検査」とした2011~13年の「一巡目検査」と、「本格検査」とする2014~15年の「二巡目検査」の2回行われており、一巡目検査では受診者約30万人から115人が甲状腺がんあるいはその疑いとされた。最大で2年間の幅しかない二巡目検査では受診者約23万6千人中51人が同じ診断となった。特に深刻なのは、一巡目で問題ないとされたA判定の人から47人がガンまたはその疑いとされたことだ。
国立がんセンターの統計データなどによると、15~19歳の小児甲状腺がんは100万人に5人となっており、受信した約30万人の中から166人もの甲状腺がん発症というのはとてつもないデータである。それにもかかわらず、検討委は「放射線の影響は考えにくい」と主張しているが、その主な理由は、チェルノブイリ事故との比較で①発症年齢で福島は0~5歳以下の乳幼児の発症がゼロで異なる②福島事故のほうが被ばく線量は圧倒的に低い~の2点だ。
これに対して報道ステーションはウクライナとベラルーシで現地取材。チェルノブイリ爆発当時0~5歳以下だった乳幼児が実際に甲状腺がんを発症したのは、早くて事故から7、8年後だったことを、ベラルーシの国立甲状腺がんセンターなどから確認した。同スタッフが実際に取材したエカテリーナさん(31)は11ヶ月で被ばくしたが、甲状腺がんが見つかったのは14歳の時だったという。つまり14、5年経ってはじめて見つかるケースがあるということになる。
もう一点、被ばく量との関係では、原発から80キロ離れ、事故当時避難指示も出されていなかったウクライナのチェルニーヒウという町で50人以上に甲状腺がんが見つかったことを明らかにした。検討委の主張の根拠が怪しくなってきた。
▽「腑に落ちない」二巡目の発症データ
検討委はこれまで福島県で小児甲状腺がんが突出していることについて、「スクリーニング効果」と「過剰診断」を主張してきた。県下で一斉に検査を行ったことで、通常だったら見過ごされてきた甲状腺異常が発見されたというのがスクリーニング効果。過剰診断はたいしたがんでもないのに甲状腺がんと診断して手術まで行ってしまったというもの。しかし、この2つの説は二巡目で51人も甲状腺がんが見つかったことで破綻した。
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