関電高浜原発、再稼働強行なら最悪シナリオの作成を

4号機原子炉停止事故の背後にトラブル多数の恐れ

関電高浜原発4号機で事故が相次いでいる。単に事故が起きているだけではない。事故が別の場所、別の原因で起きたことがかえって深刻さを示している。

229日に起きた原子炉緊急停止は、関電の説明によると、発送電を開始した瞬間、送電線側から想定を超える電流が流れたため変圧器付近の検知器が反応したものという。関電は原子炉が緊急停止したことからトラブルを公表する基準(04)の最も深刻な「4」に当たるとしている。

 

4号機では、この直前の20日、放射性物質を含む1次冷却水漏れが見つかった。関電は再稼働に向けた準備をしていたが、配管の弁を取り付けていたボルトの緩みが原因として、ボルト周辺のチェックをしただけで、当初予定通り26日に原子炉を起動していた。いずれも事故としては「軽微」、「外部への放射能の流出はない」などとする説明だけで、なぜ放射能が流出したり、原子炉が緊急停止するに至ったかという根本的なところには踏み込まないで終わろうとしていると思える。

 

▽重大事故の背後には多数のトラブル

重大事故の確率で有名な「ハインリッヒの法則」(1929年)によると、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常な事象がある。つまり、いくつもの「軽微な事故」が重なると重大事故の確率が高くなるというものだ。

ハインリッヒの法則をさらに事例研究で高めたものに「バードの法則」(1969年)と「タイ-ピアソンの法則」(1975年)がある。バードの法則では重大事故1の背後に物損事故30、その背景にニアミス600件。タイ-ピアソンの法則では重大事故1:軽中傷事故3:応急措置を施した事故50:物損事故80:ニアミス400の割合となっている。

 

関電高浜原発4号機の原子炉停止はトラブル公表のレベルで最悪となっているので「ニアミス」や「物損事故」のレベルではなく、重大事故の一歩手前程度とみるべきだろう。

その裏でトラブルと認識されない、あるいは気付かなかった「物損事故」や「ニアミス」が発生していたか、あるいは発生しているということになる。今回は原子炉の一次系と発送電系という全く系統の異なるところで事故が起きており、外に表れていない、あるいは隠ぺいしている「ニアミス」レベルの事象は相当多いのではないか。

 

 それぞれの事故で「原因」なるものは示されるだろうが、最大の原因は老朽化だろう。高浜原発4号機は、既に営業運転に入った3号機とともに1985年に運転を開始した。営業運転に入ってからも既に30年を経ている。東電福島第一原発の事故で停止したまま、5年近く運転しないままになっている。

 

▽再稼働停止仮処分を覆した結果

 しかし安倍政権は再稼働を急ぎ、原子力規制委は昨年2月高浜原発34号機の再稼働申請を認可した。これに対して高浜原発周辺が再稼働停止の仮処分を申請。福井地裁(樋口英明裁判長)は昨年4月、一連の原発訴訟で初めて原発の稼働を認めないという画期的な仮処分を決定した。この時の決定理由の一つが「原子力規制委の新規制基準に適合していても十分に安全性を保障していない」というものだった。しかし同じ福井地裁で1224日、林潤裁判長は「安全性に問題はない」として仮処分決定を取り消す決定を行い、再稼働につながっている。

 原子力事故は大地震や津波といった外的要因だけで起こるわけではない。小さなトラブルあるいはほころびを見過ごし、取り返しがつかなくなってしまうことはままある。失敗学によると、失敗には①織り込み済みの失敗②結果としての失敗③回避可能であった失敗-の3種類あるが、問題は③だ。失敗からさらなる悪循環に陥る。想定していれば回避可能だったが、予想していなかったためパニックとなり、最悪の状態になってしまうという。

 

関電は220日の放射能漏れ事故の後、徹底的な点検を行わず、当初予定していたスケジュールに固守して、次の事故に見舞われた。再稼働そのものから見直さなければ、「回避可能であった」はずの最悪を招きかねない。それにしても、福井地裁の林裁判長は何を持って安全と見なしたのであろうか。

201532日)