「STAPの闇」暴くきっかけになるか

会計監査院が理研の無駄遣いや不適切支出を公表

 

 久しぶりにSTAPの名が紙面に登場した。「夢の万能細胞」が完全に否定されてから約1年。会計検査院が116日発表した2014年度の決算検査報告書の中で、無駄遣いや不適切な使われ方の典型例の一つとして、各社が取り上げたのだ。その4日前には、早稲田大学が総長会見までして、疑惑の張本人である理化学研究所(理研)の元研究員、小保方晴子氏の博士号取り消しを発表している。

 間違いなく戦後(あるいは近代日本)の「○大科学ねつ造事件」に取り上げられると思われる「STAP事件」。最初は昨年128日、神戸市にある理研発生・再生科学総合研究センター(当時)での派手な発表だった。「16社約50人の記者が集まり、割烹着姿の若い女性研究者が、ピンクや黄色に壁を塗られた研究室で試験官を振る光景に、無数のフラッシュをたいた」(14316日付毎日新聞)。多くの国民の眼に残っている光景だ。それから一転、相次いで明るみに出た疑惑の数々。理研は同年4月1日には論文のねつ造・改ざんを認定し、STAP事件は終わっていたはずだった。

 しかし、小保方氏の「STAPはあります」「200回以上成功した」などの発言に引きづられ、「検証」が始まった。この背景には「悪意ではなさそうなコピペや画像の転用」(科学史家、米本昌平氏=14415日付週間エコノミスト=)や、漫画家やくみつる氏の「『自信を持っていることが伝わった』とホッとした様子だ」(14410日付東京新聞)など、「若い娘だから」擁護という当時の雰囲気があったことは間違いない。

 しかし会計検査院が調査した結果は、理研という組織にたくさんのネズミがいることを示す結果となった。各社が一様に指摘している第一点は、STAP研究費(201113年度)が5324万円だったのに対し、調査費(1314年度)が9170万円と遥かに上回っていた点だ。研究費に含まれる物件費3558万円のうち1140万円は研究室内の内装工事費だったという。マスコミ受けのためとしか考えられない、壁の塗替えなどに研究費の5分の1が使われていたのだ。結局、純粋な研究費は2410万円というが、この内実もどこまで本当か。

 さらに調査費も、直接の検証経費は1730万円。残りは調査委員会などの「経費」として3610万円、弁護士への相談など関連経費3827万円となっている。新聞によっては「メンタルケア費」のほか、改革委員会費や広報経費などとして1250万円を上げている社もある。

 科学研究では何度やっても成果が出ない実験がほとんどだ。従って、実験に直接関わる物件費や研究員の人件費などを計上するのは当然だ。「小保方応援団」が多かった状況では、「検証」もやむを得なかったのかもしれない。しかし、それらよりも使途不明な費用の方が多かったという問題はうやむやにされるべきではない。内装工事はマスコミ受けのためであるのは間違いないが、高額に膨らんだのは理研側だけの責任なのかどうか。一連の広報経費などの細かいデータを明らかにさせる必要がある。

 さらにSTAPと直接関係ないのだろうが、特定の社しか作っていない仕様に合わせて発注し、イタリア製のテーブルや椅子などを2件約950万円で購入していた例や、規定に違反して研究者が直接業者に資材約38000万円も発注していた例などが示されている。現金を前払いしてポイントと交換、物品を購入していたケース3910件など犯罪に等しいのではないか。

 理研は安倍政権下で、一般の研究法人よりも高額の資金を獲得できる「特定国立研究開発法人(仮称)」への昇格を目指しており、今も候補法人だ。山口俊一科学技術担当相は今年3月、同法人設立のための法案を通常国会に提出すると言明したが、結局提出されなかった。今回の会計監査院報告で「後始末は終わった」として、次期通常国会に提出する方針なのか不明だが、会計監査院に指摘されているような使い方を許したまま認めていいのか。一連の「お祭り報道」を展開した各社は、きちんと読者に説明する責任がある。

 そこで気になるのが、読売と産経の姿勢だ。東京は6日付夕刊の1面トップで「税金の無駄 悪質例増す」とする本記のサイド記事として「STAP問題」を取り上げた。朝日も本記は1面に、STAP問題は第2社会面で「STAP調査9100万円 理研不正、研究費を上回る」と報道。毎日も第2社会面で「STAP経費14500万円」とし、費目の内訳を細かく報じた。これに対して読売は翌7日付朝刊の第2社会面に「STAP論文調査9200万円」という16行の短信のみ。産経に至っては、同朝刊第3社会面で会計監査院の記事の中で11行紹介しただけ。

 秘密保護法や集団的自衛権、一連の安保関連法制などに対する両紙の際立った政権寄りの姿勢と、STAPと理研に対する異様に地味な扱いと何か関係があるのだろうか。ここまで際立ってくると、何か裏があるのではないかと知りたくなってくる。

20151112日)