及び腰報道

及び腰報道は権力への迎合の一里塚

東京と朝日の違いで分かる「迎合」ぶり

 

 シリア難民の少女の写真をモデルにして、「他人の金で。そうだ難民しよう」と書かれたイラストがフェイスブックに掲載され、世界中で大騒ぎになってから2カ月弱。海外メディアの中には当初から大きく扱い、難民と移民を混同させた安倍晋三首相のニューヨークでの記者会見もあって、世界で日本への批判が高まる原因の一つともなった。このイラストについて目に付いた段階で2つの新聞が特集で取り上げた。しかし、その取り上げ方には、かなりの違いがある。その違いに、権力への及び腰と「迎合」が透けて見える。

 

 最初にイラスト問題を取り上げたのは東京新聞。1010日付けの「こちら特報部」のコラムに載った。この時点で既にいくつかの海外メディアが大きく取り上げ、ネット署名サイト「チェンジ・ オルグ」の削除を求めるキャンペーンには1万人以上が署名。イラストを描いた漫画家がフェイスブックから削除すると表明していた。東京新聞にしては遅い対応だったが、それでも見出しは「『人種差別』世界が非難」「シリア難民中傷イラスト」「日本人漫画家がフェイスブック投稿」との見出しを取って、内容を掲載している。

 特にイラストを描いた漫画家の氏名を書き、この「はすみとしこ」氏は「フェイスブックの『安倍総理を支える会』の中心的な人物でもある」と、重要な事実を明記した(はすみ氏は同グループの「管理人」)。海外メディアが問題視したのも、この「安倍総理を支える会」との関係を重視したからに違いない。

 

 一方の朝日新聞。ずいぶん遅れて1024日付けの「メディアタイムズ」でイラスト問題を取り上げた。その見出し。「難民批判イラスト 差別か風刺か」「日本の漫画家が投稿 国内外で波紋」と、「難民中傷イラスト」とした東京とは大きく異なる。朝日はイラストの趣旨は「難民批判」とみなし、「差別か風刺か」という難民は風刺対象であるか否かという選択にすり替えている。従って海外メディアを通した世界からの評価も、東京の「世界が非難」に対して、朝日は「国内外で波紋」という無意味な表現になっている。

 

 朝日があえて「風刺」という表現にこだわったのは、右翼勢力が声高に叫んでいる「なりすまし難民」攻撃を意識したものであることは間違いない。通常なら、先行して報じた報道の後塵を拝する以上、より詳しい内容で凌駕するのが報道界のならいだが、朝日の記事にはそれが見られない。せめてイラストを描いた漫画家を取材して、その考え方を報じてしかるべきだが、実は朝日の記事にはイラストを描いた漫画家の名前がない。「日本の漫画家」とあるだけだ。当然、東京新聞に載っている『安倍総理を支える会』というフェイスブックグループの管理人であるという事実も書かれていない。

 

 こうしてみると、朝日は何のために、いまごろ報道したのかという疑問が湧くのは当然だろう。930日の安倍首相ニューヨーク記者会見問題に対しても、朝日は今回の記事の中で「安倍晋三首相が難民支援に約970億円の拠出を表明しつつ、受け入れに言及しなかった」とさらりと書いているが、安倍首相がこの時会見で語ったのは「移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていく(以下略)」という、難民と移民をはき違えたとんでもない回答だった(啄木鳥No.32参照)。

 

 既に多くの国民が知っている記者会見の内容を棚に上げ、難民中傷以外の何ものでもないイラストを、作者の主張や意図を覆い隠して「表現の自由」やフェイスブックの削除対象か否かという次元にすり替えることで、朝日は権力に迎合していると言わざるを得ない。作者の蓮見都志子氏はイラスト騒動の後も「安倍総理を支える会」グループの管理人として活躍、そこでは嫌韓反中の記事が満載なのだから。

20151027日)