重大トラブルにもかかわらず原子炉を動かす川内原発 「再稼働」に猛進しなければならない訳は?

 原子力規制委員会のお墨付きと安倍晋三首相の「安全宣言」で再稼働を始めた九州電力川内原発1号機で、やはりトラブルが発生した。九電によると、発電タービンを回した後の蒸気を冷やして水に戻す復水器の冷却用配管に穴が開き、海水が2次系に流れ込んだとみられるという。

 

 九電は今回のトラブルについて、トラブルの深刻度を示す指標(レベル0から4までの5段階)の真ん中に当たる「レベル2」としたが、原子炉の稼働は続けている。本来なら、さらに深刻化する前に原子炉を止めて徹底的に検査、調査するのが筋だが、安倍政権下の「集団的無責任体制」下では安全は二の次になってしまったようだ。

 

関電美浜原発でもあった復水器事故

 2次系の配管事故で思い出すのが、2004年8月9日に起きた関電美浜原発3号機の2次系配管破損事故だ。この事故では、配管破損によってタービン建屋に蒸気が噴出、点検作業準備中の作業員5人が死亡、6人が重傷を負った。事故原因は配管の「局部減肉」とされ、検査を見落としていたとして福井県警は業務上過失致死傷の疑いで強制捜査に踏み切っている。

 

 関電美浜原発事故(関電は「トラブル」ではなく「事故」と認めている)では復水器から蒸気発生器をつなぐ復水管が破裂したもので、関電は事故後社内に調査委員会を設置、半年かけて報告書をまとめた。2次系の事故のため放射能は外部に放出されなかったが、深刻な事故だったことが分かる。美浜原発の復水管破裂の直接原因は配管の肉厚が減ってしまった「減肉」。その最大の要因は経年化だ。破裂した部位は運転開始から27年間、一度も点検されず、そのまま使っていた。

 

 川内原発も1984年の稼働開始以来31年を過ぎている。穴が開いたとみられる配管のある復水器は川内原発の場合3系統あり、各系統約1万3000本の配管が通っているという。3系統を合わせると約4万本だ。すべて84年の営業運転開始以来、交換されたことがないという。関電美浜事故の発生時期よりも4年間も長い。

 

 美浜のような経年化による減肉は、川内でもあちこちの配管にあるはずで、徹底的に調べる必要がある。単に穴を塞ぐだけでは解決にはならないのは分かっているはずで、3系統の全配管について健全性を確認する必要がある。当然ながら検査期間は原子炉を止めることになるが、九電は運転を続けるという。つまり徹底した検査を行わないということだ。大事故になってからでは遅いとは思わないのだろうか。

 2004年の事故を受けた関電は報告書の中で「高経年化対策については、技術的側面と社会的側面から対応の充実を図る必要がある」と結んでいたが、九電からは現在進行形の「トラブル」に対する真剣さがうかがえない。地元の8月22日付け南日本新聞によると、国会事故調査委員会の元委員・田中三彦さんは記事の中で「老朽化を踏まえた厳しい検査や審査がされていない証明だ」と厳しく批判している。

 

蒸気発生器で破断事故が起きたら

 九電は2次系の配管破損のため、外部には放射能漏れがないことを理由にトラブルを軽くみせようとしているようだ。それを受けた「原子力ムラ」からも同調するような論調が流れている。しかし忘れてはならないのが、2次系の復水器で蒸気から戻った水が流れていく先は原子炉建屋内にある蒸気発生器だ。

 蒸気発生器で起きた事故として有名なのが1991年2月に関電美浜原発で起きた伝熱管「ギロチン破断」事故だ。高濃度の放射能を帯びた1次冷却水55トンが2次系に流れ込んだほか、緊急炉心冷却装置(FCCS)が国内で初めて作動した。それもECCSは自動で作動せず、運転員が手動で作動させて最悪の事態を避けた、それも「あと0.7秒でチェルノブイリ原発事故」(元原発技術者の故平井憲夫さん「原発がどんなものか知って欲しい」より)という事故だった。

 

 炉心を流れる1次系の水は高圧に加圧されており、2次系との圧力差は約100気圧もある。それが、わずか肉厚1.3ミリの伝熱管を通って熱を交換する。海水で塩分を含んだ2次系の水が流れていくと、伝熱管に損傷を生じかねない。

 

 川内原発では、関電美浜でギロチン破断事故が起きたのと同じ1991年に、蒸気発生器細管の摩耗減肉トラブルが1号機と2号機で起きている。2000年は蒸気発生器の細管損傷も1号機で発生している。このため2004年に「伝熱管に応力腐食割れによる損傷が継続的に確認された」として1号機の蒸気発生器を交換したが、はたして十分か。

 

 川内原発と同じ加圧水型の米カリフォルニア州サンオノフレ原発は2013年に廃炉を決めた。放射能を含んだ蒸気が原子炉建屋に噴出した事故のためだ。原因は三菱重工業製の蒸気発生器に欠陥があったためだが、三菱が同原発に納めた蒸気発生器は古いものではない。2010年と11年に前のものと交換して据え付けたばかりだったが、12年に運転再開直後にトラブルが発生した。調べてみたところ、3000本以上の伝熱管に1万5000カ所もの早期摩耗(!)が見つかったという。

 

 普通に運転してこれだけのトラブルが見つかっているのだから、復水器トラブルがあれば、加圧水型原子力発電所の肝とされる蒸気発生器でどんな事故、トラブルが発生するか分からない。それにもかかわらず、再稼働に猛進するのはなぜか。電力会社は福島第一原発事故以前よりも「事故・事象」に対する柔軟性を失っているようにも思える。

 

 山本太郎参議院議員は最近、参議院の特別委員会で「アーミテージ・ナイ レポート」を曝露。その中で、米国による日本への要求項目として原発再稼働が集団的自衛権やTPP参加と並んで掲げられていると明らかにした。「米国の要求のため、安全確認を疎かにしても再稼働しなければならない」という噂が、噂に留まっていればいいのだが。

2015825日)