数十年ぶりに熱い夏がやってきた よみがえる「ファシスト通すな」の声

 衆議院で一連の安保関連法案(いわゆる戦争法案)が強行採決されて1週間。7月14、15、16、17、18の5日間を中心にした抗議行動は15日の十万人超え(主催者発表)を筆頭に連日多くの人が集まり、数十年ぶりに「熱い」夏がやってきたと感じさせるものといえそうだ。

 

 一部のテレビは強行採決前「与党関係者『(7月18日からの)3連休を挟めば空気が和らぐ』」(7月13日のテレビ朝日)、「首相周辺『国民は時間が経てば忘れる』」(7月15日の日本テレビ)などのテレップを流して自公幹部の声を伝えていたが、果たしてどうだろうか。NHKは強行採決後、躍起になって「安保法案、成立の公算大」と、参議院の審議にかかわらず自然成立するかのように伝えているが、そう甘くはないのではないか。

 その証左が、昨年の6月、7月と様変わりした国会前の「熱さ」だ。フェイスブックなどのSNSを見ていると、集団的自衛権反対、安保法制反対の動きに新しい波が来ていると感じる。昨年71日の集団的自衛権閣議決定を挟んだ数日も国会周辺にいたが、その時と比べると、まず集まった人たちの構成が違う。人数に至っては、大きく異なる。

 

 昨年は70年安保時の「全共闘世代」や、その前の「60年安保(を知っている)世代」が大半だった。しかし今年に入って「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」に集まった市民団体と、「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs)」に集まった若者たちとの融合が進んでいる。国会正門前では「総がかり」とSEALDsが時間を割り合ってシュプレヒコールする場面も。「#本当に止める」というツイッターの呼びかけを受け、行動は全国各地に広がってもいる。

 この「本当に止める」という合い言葉が、抗議行動を熱くしているし、新しい波を生み出していると思う。これまでの「前衛党」が指導しようとした運動(全共闘運動時も、新左翼と一口にいわれた団体はそれぞれ自分たちだけが本当の前衛と考えていた)は、実際は目的が党勢拡大など別のところにあり、運動に参加した労働組合なども「対置要求」と称して逃げる道を探ってばかりいた。だから「本当に止める」ことはなかった。

 しかし自然発生的に集まってきた若者たちは対置要求ではなく、本当に止めようとしている。どこか米国の指示する他国に行って、直接関わっていない人たちに銃砲を向けるという戦争法案に対して、対置要求などの条件闘争はなり得ないのだから。

 その意味では極めてラジカルだが、不思議なことに昨年夏に比べて悲壮感が少ない。昨年はデモや抗議行動への参加に逡巡していた人たちが、吹っ切れて免疫が出来たかのように参加しているようにみえる。

 「言語明瞭意味不明」と揶揄され、質問に詰まると早口になって支離滅裂となってしまう安倍晋三首相と自公政府の戦争法の目的について、理解が進んでいないのではなく、十分ではないが進んできたので反対が増えたというのが実情だろう。理解が進み、このままでは大変なことになると分かって吹っ切れたから熱気があるのだ。

 

 そのSEALDs。ヒップホップ調の早いテンポで叫ぶシュプレヒコールのなかに「ノ・パサラン」なる言葉が何回も出てきた。最初はパサランという言葉が聞き取れず、意味も分からないので戸惑ってしまった。

 何かノリのいい言葉なのだろうかと思っていたが、この言葉をHitoshi Kawashimaさんという人が7月17日、フェイスブックで紹介していた。この記事によると「ノ・パサラン」とはスペイン内戦時、人民戦線政府の女性指導者ドロレス・イバルリ・ゴメスが発したスローガンだという。意味は「奴らを通すな」。フランコ将軍率いるファシスト軍が人民戦線政府に対して攻撃したマドリード包囲戦に際してイバルリが掲げた伝説的なスローガンとのことだ。ここでスペイン内戦が出てくるとは思わなかった。

 SEALDsは叫ぶ。

「奴らを通すな!」

「ファシスト通すな!」

「強行やめろ!」

「ノ・パサラン!」

最初きいた時に違和感を覚えた、これら「通すな」というフレーズも、スペイン内戦から来ていたのだろう。

 ちなみにイバルリはスペイン共産党の書記長までなった人。スペイン人民戦線政府は先に成立したフランス人民戦線政府と同様、共産党系だけでなく社会民主主義者からアナキスト、平和主義者らが「反ファシズム」で幅広く結集して成立した。

 そのバックボーンとなったのが、1935年のコミンテルン(共産主義インターナショナル)第7回大会といわれる。国際共産主義運動にとって歴史的な転換といわれる第7回大会は、平たく言うと「味方でないものは敵」から「敵でないものは味方」への大転換(山川出版社の「世界史用語集」の孫引き)で、路線の中心に反ファシズムを据え人民戦線主義を提唱した。イバルリが社会民主主義者が大統領となった政権に入ったのもその流れだった。今、日本共産党が「自分たちだけが正しい」史観を超えて、幅広い野党との共闘を模索しているのをみると感慨深いものがある。

 

 しかし一連の抗議行動の裏で、危ない動きが進んでいることを忘れてはならない。自公両党が衆議院の特別委員会で強行採決した7月15日、原子力規制委員会は四国電力伊方原発に「適合」を与える決定をした。また米国は日本にオスプレイ5機を売却すると発表した。5機分で3億3250万ドル(約410億円)。日本は米国から最終的にオスプレイ15機とエンジン40機などを購入する計画で推定30億ドル(約3690億円)。これら一連の出来事は別個のものではなく、原発再稼働と自衛隊の装備の増強は、集団的自衛権とセットになったものであることを、図らずも示している。

2015720日)