ヨコスカにイージス増強、オキナワでは米州兵が駐留 安保法制の背景に、不気味な米軍の動き

在京の新聞各紙は神奈川県版にしか掲載せず、テレビは元々報じていなかったようなので大半の国民には情報が流れていないが、安保法制(いわゆる戦争法)の国会審議最中の6月18日、米軍横須賀基地に米軍のイージス艦が入港した。米国が進めるアジア太平洋地域重視戦略「リバランス政策」の一環だという。

 入港したのは誘導ミサイル巡洋艦のチャンセラーズヒル」(タイコンデロガ級、排水量約9900トン)。米軍はチャンセラーズヒルに続いて2017年夏までに弾道ミサイル防衛(BMD)能力を持つミサイル巡洋艦「ベンフォールド」と「ミリアス」という2隻のイージス艦を追加配備すると発表しており、米軍横須賀基地を拠点とする米艦は現在の11隻から14隻に増強される。6月19日付け朝日新聞神奈川県版によると、増隻は1992年以来23年ぶりとのことだ。

 イージス艦とは、洋上での対空戦闘システム「イージス・システム」を搭載した艦船のことだが、チャンセラーズヒルにはシステムの最新バージョンである「ベースライン9」を搭載。対空の探知と火器を効率的に統合運用する新防空システム「NIFC-CA」(ニフカ)も装備。入港後、記者の取材に応じた同艦の艦長は「ベースライン9でデータ処理速度が速くなり、ニフカを有効に使える」と自負している(6月19日付け東京新聞横浜版)。

 ローカルニュースにしか扱われていないが、安倍政権が強行しようとしている安保法制とからみ、極東の軍事バランスに影響する重要な出来事といえる。そう思って、各紙の「県版」ニュースをチェックしていたら、辺野古新基地建設が焦点となっている沖縄に米国の州兵が駐留しているというニュースが見つかった。6月17日付け沖縄タイムスデジタル版の記事だ。記事は以下の通り。

 

 【嘉手納】米軍嘉手納基地に16日午後、米国バーモント州の空軍州兵部隊に属するF16戦闘機7機が飛来し、暫定配備された。米空軍第18航空団によると、約10機が配備される予定で17日以降も同基地に飛来することが予想される。州兵部隊の嘉手納配備は、1月のウィスコンシン州に続き2度目。第18航空団の発表では災害救助や海賊対策などの訓練を実施。通常、3、4ヶ月間訓練するという。

 

 気がつかなかったが、この記事によれば今年1月、既に別の州の州兵「空軍」組織が嘉手納に配備されていたのだ。そのウィスコンシン州兵の空軍もF16戦闘機12機を飛来させ、最近まで訓練していたという。戦闘機による災害救助というのが、理解不能だが。

 米国で州兵というのは国防軍とは独立して、州内の治安維持を専ら担っているものと理解していた。さらに各州兵組織がそれぞれ空軍を有し、F16戦闘機を多数保有しているとは知らなかった。沖縄では最近、米兵による事件、事故が急増しているが、これについて生活の党の玉城デニー衆議院議員は記者会見で「外国に来た州兵が浮かれて騒いでいるという状況が、事件の背景にある」と話しており、州兵部隊の振る舞いは問題視されているようだ。

 しかし、なぜ沖縄まで来て州兵が暫定駐留するのだろうか。

 これについて1月9日付けの琉球新報は「米太平洋軍がこれまでにも実施してきたアジア太平洋地域での各部隊の作戦遂行能力を高める政策の一環で、国防総省当局者は、北朝鮮などをけん制する狙いもあるとのべた」と書いている。これもヨコスカにイージス艦を追加配備する「リバランス政策」と同じという意識らしい。

 それでも、なぜ州兵なのか理解できないのは私だけではないだろう。琉球新報も1月10日付けの社説で「一地域の治安維持の担う自警組織がわざわざ他国で訓練し、周辺住民の安全を脅かす。このような不条理が許されるはずがない」と断じていた。

 それもそのはず。日米政府は2010年5月に訓練の沖縄県外移転拡充と嘉手納基地周辺の騒音軽減で同意したことになっていたからだ。しかし同社説によると嘉手納基地への航空機の離発着回数は、2013年度には前年度を1万回も上回り、2010年以降最多となったという。

 安倍首相が6月23日の沖縄全戦没者追悼式で、スピーチライターが書いた無味乾燥な「沖縄の負担軽減」という言葉をただ棒読みしたのも、そういう事実を知っているからだろう。「戦争」は「平和」、「危険」は「安全」と言い換えている首相だから、「負担増要求」を「負担軽減」と言い換えたに違いない。先の社説も半年前に「見かけ倒しの負担軽減を喧伝する前に、日本政府は沖縄の基地被害と正面から向き合い米国と交渉すべきだ」と主張していた。

 米軍は京都府京丹後市でも、地元住民の反対を押し切るように「Xバンドレーダー基地」(米軍経ヶ岬通信所)の建設を強行している。これも北朝鮮や中国をにらんだ「リバランス政策」の一環といえる。安倍政権の集団的自衛権はそう考えると、米軍再編計画の歯車の一つにみえてくる。

(2015年6月23日)