海外メディアの安倍政権批判記事を攻撃する外務省 「日本の常識は世界では非常識」がここでも

最近、離日したドイツ人特派員が日本外国特派員協会の機関誌「NUMBER1 SHINBUN」に寄稿した記事が、1週間ほど前からフェイスブックやツイッターなどのSNSで反響を呼んでいる。最近になって哲学者の内田樹・神戸女学院大学名誉教授が自身のブログ「内田樹の研究室」で記事全部を翻訳して提供したこともあって、読んだ人は少なくない。14日には東京新聞と日刊ゲンダイがともに特集記事を掲載したので、SNSをしていない人も、寄稿記事の概要を知ることになったのではないか。

 特集記事を書いたのは独紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツゥワイトングの東京特派員だったカルステン・ゲルミス記者。「ある海外特派員の告白 5年間東京にいた記者からドイツの読者へ」と題する記事は、この5年間に日本は全く別の国になったと指摘。それは、安倍晋三首相のリーダーシップの下で起きている歴史修正主義の動きによってもたらされたもので、日本の新しいエリートたちは対立する意見や批判を厳しく排除してきたと批判している。

 ゲルミス記者によると「日本のエリート」特に外務官僚から攻撃されるようになった「反動は2012年12月の選挙直後から始まった」という。ゲルミス記者が書いた安倍首相の歴史修正主義への批判的な記事が掲載された直後、在フランクフルト総領事が同紙を訪問し、「金が絡んでいる」「中国へのビザ申請のためでは」などと攻撃したという。こうした汚らしい主張をしながら、総領事は具体的には説明しなかったというからあ然とする。

 SNSには、この総領事の名前が写真付きでアップされているが、個人の判断でこうした汚らしい主張をしたわけではないだろう。安倍政権になってから、メディアに対する圧力が急激に高まっているが、海外特派員に対しても同じように圧力をかけていたことが、この一件で明らかになった。その偏執ぶりに驚かざるを得ない。

 ゲルミス記者は事態が一変したのは2014年という。「外務省の役人たちは海外メディアによる政権批判記事を公然と攻撃し始めた」と指摘する。2013年末に特定秘密保護法を成立させ、2014年は集団的自衛権行使を閣議決定。この間、朝日新聞の慰安婦報道を攻撃し、朝日新聞社および同社の支配下にあるテレビ朝日は政権に屈して及び腰の記事に終始するようになった。噴出するNHK会長問題も、安倍首相のごり押しから始まったものだ。14日付東京新聞によると、時期は不明だが、外務省は米大手教育出版社「マグロウヒル」にも慰安婦記載が不適切などとして訂正を要求したという。

 ゲルミス記者の記事内容については、内田名誉教授のブログで翻訳をじっくりと読むことができるが、もともとの英文記事は世界に流れている。海外から日本および日本人を見る目は、一段と厳しさを増すことは間違いない。

 「このままでは『日本で何が起きているのかを知りたければ、海外のメディアの日本関連記事を読む』という傾向は止まらない。そんなことまで言われても、日本のジャーナリストは平気なのか」と内田名誉教授はあきれている。

「内田樹の研究室」ゲルミス記者の記事

Blog.tatsuru.com/2015/04/10_1343.php