汚染水外洋流出は安倍首相の責任    無責任な原子力規制委と疑惑隠しの東電

東京電力は224日、福島第一原発2号機付近の排水路から高濃度の汚染水が外洋に流出していたと突然発表した。その後、宮沢洋一経済産業相が記者会見で「(政府としても)うかつだったところがある」と釈明したらしいが、政府及び東電の責任問題はあいまいなままだ。マスコミも一部を除いて追求しないので、長期にわたって高い濃度の放射性物質が外洋に流れていたことに対して、国際的に納得のできるような調査も行われようとしていない。近い将来こうしたことを放置している日本と日本人に対する世界的な批判が巻き起こるのではないだろうか。

 

 そもそも今回のケースは、本来なら安部首相の責任問題のはずだ。安倍首相は一昨年(2013年)9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、汚染水問題について「アンダー・ザ・コントロール」と宣言し、世界に大見得を切った。国内では忘れられているが、首相は大見得を切る前提として、総会に出発する直前の93日「汚染水対策をもはや東電には任せられない。政府が前面に出て行う」と表明。政府の責任で対応するので、汚染水対策は問題ないという印象を世界に与えた。従って、汚染水の外洋流出は政府の責任以外の何物でもないはずだ。

 

 今回の発表を眺めると、様々な疑念が出てくる。何か突発的な事象が発生したので急きょ記者会見したのか? 例えば外洋で高線量を検出したり、奇形魚が採れたりというような。また、なぜ雨水と断定できるのか、など不明な点が残ったままだ。さらに原子力規制委はかなり前から認知していたことを認めたが、いつからか、どう対処したのかなど、規制官庁としての姿勢は無責任なままだ。何か、裏に隠しているものがあるのではと疑わざるをえない。

 この発表の直前、22日には別の排水路で「構内側溝排水放射線モニター」で「高」と「高高」という警報が発生した事態があった。どこから放射線汚染水が漏れているのか、解明したという発表はまだ聞いていない。こうした危険な事態の延長線に、外洋への流出があるのではないだろうか。

 

▼「大本営発表」の全国紙

 汚染水外洋流出という重大問題にもかかわらず、東京新聞を除く各紙、特に全国紙はいつものようにガス抜きの東電批判を簡単にしただけで、問題を済まそうとしている。

 東電が汚染水外洋流出を発表した翌225日の各紙朝刊。まず朝日新聞はなんと第2社会面中ほど2段の記事。見出しは「汚染水、外洋に流出」。「2号機の原子炉建屋屋上に高い濃度の汚染水がたまっていた、と発表した。一部が雨どいなどを伝って排水路に流れ、外洋に流出したという」という内容。毎日新聞はさすがに社会面中ほど4段の記事。見出しは「汚染水 外洋流出」と朝日と同じ。「東電は2号機原子炉建屋屋上に高い濃度の汚染水がたまっていたと発表した。一部が雨どいなどを伝って外洋に流れた」までは同じだが、後半には「東電は国にも報告していなかった」という“ご親切”な一文がある。報告していたことは翌日判明したが、この記事はあたかも安部首相には責任はないかのような書き方だ。

 これが読売新聞や日本経済新聞になると、もっとひどくなる。まず読売。第2社会面3段で、見出しは「汚染雨水が外洋流出」。雨水と断定している。「東電は2号機建屋屋上の一部にたまっていた雨水から、高濃度の放射性物質を検出したと発表した」「4年前の原発事故時に飛散した放射性物質とみられ、汚染水は排水路を通して港湾外の海に流出した」と続く。

 さらに日経。第2社会面左肩3段で、見出しは「屋上の汚染水流出」とさらっと流し、「屋上にたまった汚染水が長期間にわたり港湾外に流出していたと発表した」と書いている。日経の記事しか読んでおらず、なおかつ福島第一原発の汚染水問題に詳しくない読者は、汚染水が流出した「港湾外」とはどこのところかさっぱり分からない仕組みだ。

 一方の東京新聞。まず25日付朝刊は1面トップ、解説付き。見出しは「汚染水 外洋に垂れ流し」「1年前に把握、放置」「排水溝改修せず」と続く。記事は、「東京電力が、福島第一原発の排水溝から高濃度の放射性物質を含む水が外洋に漏れ続けるのを放置していたことが分かった」とし、どんな汚染水についてかは「2号機の建屋屋根にたまった放射性物質などが雨で流され、溝に入り込んだ可能性がある」と東電発表に則してはいるが、断定はしていない。

 東京新聞は翌26日付け朝刊でも1面トップで「汚染水漏れ1年以上前報告」「規制委、対策指示せず」「データ求めず、東電任せに終始」と追求第2弾を放っている。しかし全国紙には似た記事は見当たらない。

 実は、25日の原子力規制委員会の記者会見で、何人もの記者が汚染水流出問題を取り上げている。その席で、原子力規制庁の担当者は少なくとも201311月に東電から報告を受けていたことを認めていた。ただ記者会見で、外洋流出は国際問題になると指摘したのは、雑誌「facta」の記者だけだった。長時間にわたって質問したのだから記事にしてしかるべきだと思うが、東京以外は見当たらない。関心がないのだろうか。それとも記事にするのが怖いのだろうか。

 もう一つ。汚染水が何であるか。東電は断定していない。東電の報告によると①原子炉建屋の近くを流れるK排水路と呼ばれる排水路の排水口(放射線)濃度が、他の排水路に比べ高かかった②K排水路に流れ込む上流部を調査したところ、2号機原子炉建屋の大物搬入口屋上に確認されたたまり水に比較的高い濃度を検出した③これは(爆発時の)フォールアウトが屋上に付着とみられ、雨水に混ざって流れ落ちたと推定-という説明だ。

 つまり東電が雨水の放射能汚染の理由とみられるとしているのは、20113月の一連の爆発事故で飛んできた瓦礫や塵などがこの建屋に大量に降り積もったという説明だ。しかし放射性の塵などだったら、別のところでも同じように堆積し、同じように雨水で流されているはず。なぜ2号機建屋の大物搬入口屋上だけに、高いフォールアウトが沈着したのかという説明はない。ただ東電は「雨が降る度に、K排水路の線量が上がっていた」と説明しているので、この言葉を信じると他の建屋の屋上や地面にも大量のフォールアウトが降り注ぎ、雨水に混ざって外洋に流れだしてしまったことだけは容易に想像できる。2011年の原子炉建屋の爆発後からなので、安部首相が大見得を切った2013年の前も、切ってからも一貫して流れていたということになる。しかし雨水と決めつけている新聞各社には、そうした問題意識は感じられない。

 

▼重大な事実を隠すための発表か?

 このままだと、あまりに無責任と(海外から)みられると思ったのか、宮沢洋一経済産業相は27日の閣議後の記者会見で「大変遺憾なことだと思う。(政府も)うかつだったところがある」と釈明し、政府として対応の遅れを認めた。経産相はこの席で「K排水路の濃度が高いことは昨年2月に把握していた」が、東電から報告がなかったため「順調にいっていると思っていた」とのんびりした発言をしている(227日付朝日夕刊)。また田中俊一原子力規制委員長も27日、広瀬直己東電社長に「対応が後手に回ったことに苦言を呈した」という。しかし28日付朝日新聞によると、田中委員長は「深刻に反省しなければならない。東電の安全の取り組みが信用を得られなくなることを懸念する」と、どこまでも他人事のようだ。

 実は25日の記者会見で、田中委員長は重要な事をボソッと言っている。「港湾内に流してもいずれまた港湾外に出てきますので、希釈されてというところがありますので」。つまり「シルト・フェンスで囲われています」と、あたかも港湾内に放出された汚染水は外洋には出ないような説明をしているが、田中委員長は「いずれ港湾外(つまり外洋)」に出て行くと表明しているのだ。

 ネットなどをチェックしていたら、福島原発事故後、精力的に問題を追及している「おしどりマコ・ケン」コンビが、2011年からK排水路を問題にしていることがわかった。両氏のポータルサイトに詳しく記載されているが、それによると爆発事故直後の2011325日と47日に同じ場所で超高濃度汚染水が流れ出した跡が発見されており、両氏の指摘にもかかわらず東電は201312月「これ以上は調査しない」と回答したという。

 さらに東電が公開したK排水路の図面をよく見ると、4基の原子炉の裏側を通っているだけでなく、「汚染水がたまっていた」と写真を示した2号機原子炉建屋大物搬入口の脇に「枝排水路」が通っており、よく分からないところからつながっている。マコ・ケン両氏はK排水路の出口をせめて港湾内にするよう指摘していたというが、東電はこれまで無視してきたという。その通りなら、超高濃度汚染水が流れ出した排水路なのに、これまで排水を外洋に流していたことになる。

 通常の工場排水垂れ流しだったら刑事事件になる内容だ。それにもかかわらず、どの程度の高濃度の汚染水がいつから外洋に流出していたのかさえ問題にしようとしない。25日の田中規制委員長の発言は、「これからは公然と外洋放出を行う」という前触れではないだろうか。あるいは隠し切れないほど線量の高い汚染水が外に出ているので、違う話でごまかそうとしているのではないか、など。発表自体に隠された意図があると思わざるをえない雰囲気がある。ただ明らかになったのは、全原子力ムラが隠蔽と捏造に邁進しており、残念ながら大手メディアは既に「大本営発表」の世界に移行し始めているという事実だ。

 

201532日)