「津波と防潮堤」

千葉県の九十九里浜にも津波避難タワー                   完成から1年経つが周知はどこまで進んでいるのか?

 将来発生する恐れ千葉県の九十九里浜にも津波避難タワー

完成から1年経つが周知はどこまで進んでいるのか?のある巨大地震・津波に備え、避難計画が各地で進められている。避難と防御の関係は難しいが、最悪を考慮すれば「巨大地震が発生したら、まず避難(逃げる)」ことが第一であり、逃げるための方策を最初に考えるべきだろう。

 

千葉県でも津波避難タワー

 

 東日本大震災で、東北各地ほどではないが被害にあった千葉県でも津波防御と同時に、避難計画が始まっている。長い砂浜を持つ九十九里沿岸もその一つで、九十九里町に津波避難タワーができていると聞き、見に行った。

場所は九十九里町小関。イワシ漁で有名な片貝漁港から約100メートル内陸に入った場所にあり、正式名称は「小関納屋地区津波避難タワー」。高さはT.P.(東京湾水位)16.95メートル。収容人員は146人となっている。物産品販売や食堂のある「海の駅九十九里」の施設に併設されており、いずれも昨年春できたという。2カ所ある階段の入り口には鍵がかかっているが、「緊急時は破って上がってください」というお知らせがあった。しかし、何故かタワーの周りや「海の駅」には説明は全くない。

 

 巨大地震・津波に遭遇するのは地元の人だけではない。観光やビジネスに来ている人も運悪く見知らぬ土地で被災する恐れがある。観光客を相手に造られた「海の駅」に併設して、避難タワー設置という着眼はいいが、説明もなく、店の人たちも詳しく知らないのでは、いざという時に役に立つのだろうか。

 

有料道路をかさ上げ

 

 九十九里沿岸では、東日本大震災で壊れた堤防などの復旧も始まっている。千葉県によると九十九里浜約60キロメートルのうち41キロで津波対策が必要で、うち27キロが海岸堤防などの復旧・かさ上げ、14キロは保安林の砂丘の保全による対策。壊れた海岸堤防は被災前の高さへの復旧が中心だが、一部かさ上げし全体としてT.P.46.5メートルにする。ユニークなのは砂浜と一般道路の間を走る九十九里有料道路(16.5キロ)のうち8.9キロで今の道路を2メートルほどかさ上げして緊急時の防潮堤代わりとすることで、一部で工事に入っている

 全体に海抜6メートル程度の高さで整える予定だが、これについて千葉県は過去最も津波被害が大きかったと推定される1703年の元禄地震津波による各地の津波浸水域を調べ、銚子で7メートル、九十九里浜で46メートル、御宿8メートルなどの記録から堤防高を決めているという。場所によっては過去の高波被害と変わらず、その後に造られた堤防と高さが変わらないため「海が見えない」となるところは少なそうだ。

 

車避難計画に疑問

 九十九里町で作られた避難計画には、徒歩避難と一緒に自動車での避難という一節もある。「車を使わない」が原則なのだが、東北各地での車避難要望などを踏まえたものだろうか。

 

 それによると、九十九里の浜に最初の津波が到達されるとみられるのは地震発生から約40分後。千葉県津波避難計画策定指針によれば徒歩による避難速度は毎秒1.0メートル(分速60メートル、時速3.6キロメートル)。地震発生から避難準備を整えるのに5分かかるとみて、35分で2.1キロ避難できると計算したが、千葉県が1キロ以内に避難場所をとしているので、避難タワーのほか避難ビルなどを1キロに合わせて選定したという。

 

 通常なら徒歩避難だけだが、自家用車を使う人が多いのか、自動車避難についてもガイドラインを示している。基準は宮城県が2014年に策定した宮城県津波対策ガイドライン。その中で、宮城県は自動車避難の場合、避難速度は毎秒3.0メートルと推定(分速では180メートル、時速では10.8キロ)と計算。これを九十九里町に当てはめると、35分では6.3キロ避難できると判断している。

 

 ただし、これらはいずれもうまくいった場合の話。九十九里町では自動車避難のルールとして直線的避難の実施。交差点では直進または左折に②交通マナーの順守と安全確認③信号機の点滅や路上の障害物に最大の注意④複数の避難経路を事前に確認⑤乗り合わせによる車両台数の抑制⑥(詰まった場合の)徒歩避難への切り替え-などをあげているが、うまくいくとは思えない。

 

 東日本大震災から1カ月後に起きた余震で、NHKは徒歩での避難を呼びかけたにもかかわらず、東北各地では自家用車での避難者が殺到し、道路が麻痺した。千葉県九十九里沿岸はなだらかな平野が奥まで続き、道路網もそれなりに整備されているようだが、緊急時には別だろう。最初から車避難をガイドラインに含めることはいいかことなのか。

 

 また宮城県が大震災後に策定したガイドラインに車避難が入っていることにも疑問が生じる。かねてから地域住民は、防潮堤には力を入れているが避難路・避難道整備が進んでいないと批判している。車での避難をガイドラインに示す以上、避難路の整備が前提となるはずだ。

2016224日)