「啄木鳥no.41」川内原発の一時停止を求める鹿児島県新知事誕生

安倍政権は沖縄に続き鹿児島でも民意を無視できるか?

 現在国内で唯一稼働している九州電力川内原発(鹿児島県)の運転一時停止を求めて、同県知事に初当選した三反園訓(みたぞの・さとし)氏が28日就任した。三反園氏は7月10日に参院選と同時に行われた知事選挙で、脱原発派の候補と一本化を図り、現職を破って初当選した。全面的な脱原発の主張ではないが、県民の不安が大きいとして川内原発の一時停止を公約にしてきた。

  原子炉等規制法では知事に原発の停止を命ずる法的権限はないが、当選後も各社の取材に答えて、選挙結果という民意を受け、8月中にも九電に申し入れる考えを示している。原発促進を掲げる安倍政権は、沖縄県では参院選挙で示された民意を踏みにじって、県外から多数の機動隊員を送り込んで本島北部の高江でオスプレイパッドの着工を強行したばかりだ。今回も民意を踏みにじるのかどうか。安倍政権の意向を忖度する中央メディアがどう反応するのかも注目される。

  

 変わる活断層地震の揺れ評価

 川内原発については、熊本で震度7の激震が発生した4月16日未明から一時停止を求める声が高まりインターネットの電子署名は10万人を超え、421日に安倍晋三首相に提出された。また4月29日付の朝日新聞朝刊「時時刻刻」によると、地震発生の16日から2週間足らずで、九電に直接停止を求める電話やメールも5000件以上寄せられたという。

 

 福島原発事故後、改正された原子炉等規制法では原子力規制委に運転の停止を命ずる権限を付した。しかし田中俊一原子力規制委員会委員長は熊本、大分両県に群発した熊本地震後も一貫して、川内原発の一時停止を拒否している(420日付けの「大地震時に対応できない川内原発」参照)。

 

 その理由の一つが活断層に対する認識。しかし活断層地震の揺れ(基準地震動)の評価について島崎邦彦元委員長代理が福井県大飯原発に関連して、規制委や規制庁が採用している計算方法に誤りがあるとの意見を示している。島崎元委員長が直接言及しているのは大飯原発だが、過小評価となっている計算式は川内など他の原発でも同じはずだ。田中委員長は当初問題ないとの一点張りだったが、最近になって再計算をする意向も示し始めた。

 

 中央メディアは知事選後、法的根拠を主な理由に「三反園氏もトーンダウンしている」との観測記事を流してきたが、三反園氏は最近になってもインタビューで同じことを主張している。法的な停止命令はないとしても、鹿児島県と九電の安全協定では「鹿児島県は安全確保のために原発に立ち入り調査し、必要と認められれば、適切な措置を求めることができる」(725日付日経新聞朝刊)権限を持っているためだ。

 

半径250キロ圏内は原発事故の避難域

 背景には2014521日、福井地裁が下した画期的な関西電力大飯原発3、4号機運転差し止め判決がある。判決は、原発運転は「生命を守り生活を維持する人格権の根幹を具体的に侵害する恐れがある」と認定した。そのうえで、福島第一原発事故時に近藤駿介原子力委員長(当時)が菅直人首相(当時)の求めで行った最悪シナリオで示された半径250キロ圏内まで任意移転の地域が広がる可能性について、判決は「一定の信頼性がある」と認定した。東京都知事選挙で鳥越俊太郎候補が掲げた「東京から(半径)250キロ圏内にある原発を再稼働させない」という公約も、この福井地裁判決を受けたものだ。

 

 「250キロ圏内」を川内原発に当てはめると九州全域がすっぽりと覆われる。当該県の知事としては、現在唯一稼働している原発を一時停止し、再点検を求めるのは当然だろう。そして、それが知事選で示された民意である。三反園新知事は8月上旬にも、避難経路などを視察。8月下旬か9月上旬に申し入れると再三表明している。また泉田新潟県知事が進めている対応に習おうとしているとみられる、専門家による検討委員会の設置も掲げている。民意を無視するのか、圧殺するのか。多くの国民の命か、関係する企業の利益かがあらためて問われている。

 

2016年7月28日)