気候変動枠組条約と「テロ対策」の欺瞞

 パリで開かれていた第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)は、参加した全条約締結国が今世紀末までの平均気温上昇を摂氏2度以下に抑えるよう、地球温暖化の元となる炭素の排出量を削減するという画期的な「パリ協定」を採択して終了した。

 「議定書」まで進まなかったとしても、これ自体は大変結構なことなのだが、温暖化とテロとの闘いの両立はどうなったのか。1130日の会議開幕宣言で議長国のオランド・フランス大統領は「地球温暖化との闘いとテロとの闘いを分けることはできない」と演説。日本の各紙に同じ言葉が並んだ。

 しかし1212日採択されたパリ協定には「テロとの戦い」が明記されていない。もともと文脈の異なるストーリーだったのだから当然といえば当然かもしれないが、開幕直後テレビに登場した解説者や有識者と称する人達は、こぞってオランド演説を評価していたはず。新聞でも読売は121日付朝刊の2番目の見出しを「対テロ結束訴え」としていた。東京も1130日付の予告原稿で「IS対策でも連携へ」という記事を載せていた。

 有識者らがオランド演説に共感した背景には、温暖化による激しい気候変動で土地を追われる人達が難民になり、そのまま放置するとテロリストになってしまうという発想があり、危機意識として共感を表明したのに違いない。しかしオランド大統領やオバマ米大統領は、難民を増やさないための闘いを口にしただろうか。それどころか、123日に空爆に踏み切った英国のように欧米とロシアはシリアに対する無差別ともいえる攻撃を強化し、多数の子どもを殺傷している。その一方で、フランスは難民受け入れを削減する意向を公然と表明している。暴力による支配の強化はテロリズムを生み出すだけと指摘されているにもかかわらず、暴力だけの対応を続けている。

 地球温暖化対策に本腰を入れるといいながら、環境難民が大量に出現する恐れのあるアジア、アフリカ、中南米諸国への対応をどうするのかも明確ではない。

 そもそも現在の中東情勢を作ったのは、他でもない米国だ。「ブッシュの戦争」といわれるように2代のジョージ・ブッシュ親子が作り出したものだ。イスラム国(IS)が所有している大量の兵器も欧米、特に米国が提供したものである。この点ではロシアのプーチン大統領が再三指摘していることが正しいと思われる。

 こうした点を無視して、温暖化によって難民が大量発生しテロの温床となるという文脈だけで、片付けてしまう危険性を十分認識する必要がある。翻ってみれば、ISが勃興するに至ったイラク戦争は米国が作り出したといえるのに対し、シリア内戦は気候変動によるシリア国土の広範な干ばつが農民の流民化をもたらし、富の不公平さを問題とした反政府派が反乱を起こし、政府軍、反政府軍の双方に欧米が大量の武器を売ることによって長期化させているといえる。どんなに爆撃機で縦断爆撃を行っても干ばつは収まらない。悪化するだけである。

 

20151217日)