New!啄木鳥no.29                                              総理を罠にかけても辺野古に固執 鳩山由紀夫氏が明らかにした官僚たちの疑惑 そして大手メディアは共犯者に

2009年に政権交代した民主党の鳩山由紀夫首相は、米海兵隊の普天間からの移転先を「最低でも県外」と政権交代選挙で掲げた「公約」が果たせず、辞職に追い込まれた。しかし沖縄県外移設を断念せざるを得なかった根拠の出処が、全く不明と分かったという事実が、当の鳩山氏の口から明らかになった。その根拠とは「基地と演習場は65カイリ(約120キロ)以内」とする米側の「基準」なるものだ。

 鳩山氏が語ったのは9月6日に東京・法政大学で開催された『沖縄映像祭 in TOKYO~終わらない戦後~』のシンポジウム「普天間基地問題とメディア報道」でのこと。鳩山氏の口からは「65カイリ」疑惑とともに、当時の藤崎一郎駐米大使がクリントン国務長官に「異例の呼び出し」を受けたと称する疑惑も語られた。いずれも虚偽と見なさざるを得ないが、そこまでして辺野古に固執する日本政府、特に外務省、防衛省の謀略姿勢は今日も変わっていないのではないか。

 

▽本当はなかった? 米の「65カイリ」基準

 鳩山氏が語った「65カイリ」事件のいきさつはこうだ。

 「普天間から海兵隊の移設先は最低でも沖縄県外、できれば国外」と主張していた鳩山氏は、首相になった後、移設先として鹿児島県の徳之島などを検討したものの、最終的に辺野古新基地建設を承認した。その理由が、米側から示された「海兵隊のヘリコプター部隊と演習場の距離を65カイリ以内とする基準」だった。徳之島は沖縄から約200キロ離れていることが断念につながったという。確かに、65カイリは多くの日本のマスメディアが事実として報じたという記憶がある。

 

 鳩山氏によると、この数字はオバマ米大統領との合意で日米の作業委員会を設けて、移転先などを検討していた議論の最終段階になって米側からもたらされた、と聞かされた。日本側官僚から「米国側から突きつけられた提案なので、米軍に逆らうことはできない」と告げられ、(最有力候補と期待した徳之島を)断念せざるをえなかったとの結論に達したという。

 

 日本の防衛省が作成した「極秘」「複写禁止」などと記されたコピーを鳩山氏は保管しており、沖縄の琉球新報が粘り強く取材した結果、そうした「65カイリ基準」は存在しないことがわかったという。問題の「極秘文書」は2010年4月19日付の「普天間移設問題に関する米側からの説明」と題したもので、外務省作成とみられる。

 

 2013年11月27日付け同紙によると、この文書を基に在沖縄米海兵隊に取材したところ、「海兵隊の公式な基準、規則にはない」と明言したという。鳩山氏も6日のシンポで「65カイリの出処は未だに不明」と皮肉っている。

 

 当時、大騒ぎになった「65カイリ」。不思議なことに、民主党政権下ではあれほど県外移設を主張した仲井真弘多前知事も知っていたはずなのに、「県外移転」を掲げて再選された時に一度も議題にしていない。翁長雄志現知事が仲井間氏を大差で破って当選したのは昨年なので、琉球新報のスクープの後のためか、一度も話題になっていない。また、「65カイリ説が消えたのはおかしいではないか」と指摘するメディアも沖縄だけだ。外務省や防衛省に都合のいい話だと大きく扱い、まずいとダンマリを決めこむ在京メディアの体質ということだろう。

 

▽「異例の呼び出し」報道も虚偽?

 鳩山氏が取り上げた、もう一つの疑惑は藤崎駐米大使の会見だ。この問題を大きく取り上げた7月14日付け東京新聞によれば、疑惑はこうだ。

「2009年12月21日、大雪の影響で政府機関の多くが業務を停止していたワシントン。クリントン長官との面会後、カメラに囲まれた藤崎氏は記者団にこう話した。『今朝、クリントン国務長官から「来て欲しい」と連絡がありました。大使を呼ぶことは滅多にないことです』」

 

 鳩山氏によると、その直前、コペンハーゲンでの国際会議で隣に座ったクリントン長官に「普天間(からの移設先)について考える時間がかかるので待って欲しい」と直接話し、長官からはイエスの感触を得て記者団に話していたという。このため、「異例の呼び出し」は鳩山首相の県外移設に対する米国政府の不快感として日本では大きく扱われた。

 

 ところが今年に入って、思わぬところから疑惑が「再浮上」する。クリントン氏が国務長官時代、公務で私的アドレスを使っていたことが明らかになり、一連のメールを公開しているが、その中に「藤崎会見」があったのだ。

 

 それは、藤崎氏が面会する前日、国務省の職員が長官の意向を尋ねたというメールだ。東京新聞によると「明日、日本大使館の藤崎氏と面会する(カート・)キャンベル(国務次官補=当時)が、あなた(クリントン氏)の所に大使を連れて行くので、少し時間を取れないかと聞いている」という内容。藤崎氏が強調するような「今朝の呼び出し」ではなく、面会の数日前から国務省スタッフにお願いし、ようやく「少し時間を取って」もらったことになる。これでは、面会の内容も真実かどうか分からない。

 

 実は米側は当初から「異例の呼び出し」を否定していたという。面会の翌日(22日)に当時のクローリー国務次官補が記者会見で「日本の大使は呼ばれたのではなく、キャンベル氏に会いに来て、クリントン長官の所にも立ち寄った」と説明していた。従って疑惑は当初からあったのだ。だから再浮上ということになる。だが日本の新聞、テレビ、通信社はこぞって無視した。

 

 これら鳩山氏からあらためて語られた一連の虚偽疑惑をみると、メディア、特に「中央」と称する在京紙、東京キー局、NHKの報道は疑惑を追及するのではなく、政府の共犯者として辺野古に新基地を造らせる方向で記事にしているのではないかと疑われてもしょうがない。安保法案とその反対行動に対する報道ぶりなどから、ここ数ヶ月、在京マスメディアは急速に国民の支持を失っていると思えるが、その原点は2009年頃からあったといえる。

201597日)