啄木鳥no.16                                                      英語でも自国語でも意見が言えない日本人             知日米識者も「内向き日本」に苦言

1990年代から米通商代表部(USTR)で日米経済交渉など担当し、その後も日本の政財界と関わっている米先端政策研究所(CAP)上級研究員のグレン・フクシマ氏が来日し、このほど米大使館主催のフォーラムで「日米パートナーシップの強化」と題して講演した。

 USTRで経済問題を扱ってきただけに、内容はオバマ政権の経済政策から環太平洋戦略貿易協定(TPP)などについての概括的な話だったが、その中で「特に懸念している分野」として「ここ10年、15年の間、日本の若い人が内向きになっている」ことを上げたことが興味を引いた。

 フクシマ氏によると、2012年に中国人留学生は24万人、韓国からは7万3千人を数えたが、日本人留学生は1万9千人。1997年には日本人留学生は4万7千人いたので大幅減少であるだけでなく、留学生に占める日本の割合も7位と低下。さらに「間もなくベトナムに抜かれ8位になる」という。中国からの留学生が桁違いに多いのに、まず驚かされる。

 さらにシュワルツマンという富豪が自己資金1億ドルを出し、他に2億ドルの基金を募って3億ドル(約360億円)の奨学金プログラムを創出。毎年200人の学生を中国に留学させている。このように米中間の人的連携が密になっており、米国人と日本人の接触に差が開いていくと指摘した。

 さらに、米国ではアジア太平洋諸島系米国人(AAPI)の勢力が増しているという。2012年現在、AAPIは820万人で全人口の5.3%だが、人口増加の著しい人種グループのひとつに数え上げられている。カリフォルニア州では2000年から2010年までの10年間の増加率は46%で、ヒスパニック系の43%、アフリカ系の15%、白人系の1%を上回る。先の選挙で躍進したが、政治の他、メディア、学術分野でもAPPIの割合は伸び、発言力が増している。ところがAAPIの中で、日系人の影は薄い。1960年代までは最大勢力だったが、現在は中国系、フィリピン系、インド系、ベトナム系、韓国系に次ぐ6位。「移民は国の資産」と考える国々と、移民を冷淡に扱ってきた日本との差が開く一方と述べた。

 フクシマ氏は日本やカリフォルニア州などでの生活が長く、ワシントンDCには20年ほど離れていたが、戻ってみると「世界は非常に速いスピードで変化しており、ワシントンはもっと多様な街に、米国も多様な国に変わった」と実感したという。

 そうした変化を受けて、ワシントンではどの国も自分の国を理解してもらおうと努力している。米国とのディスカッション、ディベートで関係を強化している。これに対し、日本人は「分かってくれるだろう」とディスカッションも形式的だと批判する。

 では、どうしたらいいのか。フクシマ氏は日本人の問題は英語能力と指摘する。「ワシントンに通訳を連れてくるのは日本だけ。他国のグループは英語ができる。学会などに行くと、中国の学者は英語で素晴らしいスピーチをしている。日本人の学者は何年米国にいても、うまくない。自分を表現できない」と手厳しい。

 しかしTOFELの成績が向上しただけで、ワシントンで通用するのだろうか。これに対し、フクシマ氏は「雑誌『フォーブス』に書いた」として、次の文章を引用した。

「日本の指導層は、国家組織から民間企業に至るまで、対米関係においては継続性、安定性、予測可能性、前例主義を重視してきた。その結果、過去の人、組織、手法を大切にしてきた。しかし冷戦終結以降、アジアを含む世界の変化のスピードは加速。日本は変化により柔軟に対応する必要がある」

 「この前例主義という言葉は英語にないし、米国では理解してもらえない」と笑ったが、フクシマ氏の本当の懸念はここにあるのではないか。とすると、英語学習を強化するぐらいでは、中国や韓国との差が開く一方だ。

 「意見を言わない」のは日本人の美徳ではなく、出る釘となって打たれたくない、目を付けられたくない、仲間外れにされたくない、などの様々な自己防衛意識から身についてしまったものではないだろうか。意見を言わないうちに、自分の意見がなくなる。意見がないから、質問されても「分からなーい」と笑って答える。「日本の指導者層」には最適な人々だが、海外の人たちからは異様にみられ、世界の変化について行けない構造となっている。

 つまり日本および日本人が世界の中で各国民と対等になるためには、単なる英語使いではなく、英語で自分の意見を言えることが最も重要ということになる。これは英語力の前に、自分の意見を持たなければ難しい。しかし安倍晋三政権下の日本では逆に、マスコミを先頭に意見が消えようとしている。それも自分たちに対する批判に対して正面からディベートするのではなく、裏から手を回して発言を封じ込めるという陰湿なやり方だ。ディベート好きな米国人からみると、最も嫌なタイプといえる。

 フクシマ氏は「日米関係を二国間だけの問題として考えることは現実的ではない。アジア全体で起きていることを理解しなければ、二国間の関係も成り立たない」と講演で何度も指摘した。安倍政権はマスコミを利用して、国民に知らせず、意見を言わせずの強権を推し進めようとしている。国内では通用するかもしれないが、一歩外に出たら、自分の国が「ガラパゴス」であることを思い知るに違いない。フクシマ氏が上げた中国や韓国の留学生、移民の数はそれほど衝撃的だ。

2015330日)