啄木鳥

横浜地裁の福島原発訴訟で被災者の意見陳述が無事継続に 形式的裁判に終わらせないための「ヤマ場」越える

日本学術会議の「日本社会の再建の道を探る分科会」が928日、震災復興計画の見直しを求める「東日本大震災からの復興政策の改善についての提言」を発表した。大震災からの復興の過程で起きている様々な問題を学術的な側面から分析、「復興政策の現状は停滞と混迷」とし、被災住民に復興政策の二者択一を迫るのではなく、被災地の状況に即した「第三の道」を構想するよう求めるものだ。

 内閣府あるいは国会に「東日本大震災・東京電力福島第一原発事故復興過程検証委員会」を設置して復興過程についての総合的、社会的モニタリングを実施。各自治体には住民と自治体職員と専門家が参加する「地域復興再建協議会」を設置するともに、「専門支援員」を配置し自治体の政策形成、遂行能力を強化するよう提言している。

 29日の発表の席であいさつした佐藤彰彦・福島大特任准教授が指摘するように、学術会議としてはといったら失礼だが、提言には現在の政治、政策に対する厳しい批判が込められている。被災地を回って事情聴取するなどして分析したという問題提起はよく分かる。

 しかし、それが「復興政策は、その政策に『のる』(第一の道)か『のらない』(第二の道)という二者択一の選択を住民に迫る」ものなので、第一でも第二でもない「第三の道」とするとの結論に強い違和感を覚える。

 そもそも行政は「選択肢」を示しているのだろうか。選択肢というのはAかBを示して、どちらかを選びなさいというもののはずだ。しかし行政は一貫してそうした提案はしていない。

 提言によると、政府の政策は①東電福島第一原発事故被災地に対し早期帰還の推進のため巨額の予算がつけられた除染を優先させ、「除染→帰還」という道を復興政策の主要な枠組みとして固定させてしまった②岩手・宮城両県の津波被災地ではほぼすべての被災地で巨大防潮堤中心の再生計画となり、様々な難点が指摘されている上に、無理な公共事業により復興の遅延を生み出している~ことが問題という。つまり始めに「除染、帰還ありき」「防潮堤建設ありき」が復興の停滞と混迷の主要な要因ということになる。

 これを「第一の道」とすると、「第二の道」は「帰還しない」「防潮堤を造らない」ための具体的な代替案になるはずだが、提言では第一の道に「のる」か「のらない」になってしまう。被災住民の間からは様々な代替案も出ている状況であり、十把一絡げに「のらない」のが第二の道と言い切ってしまうのは危険ではないか。そもそも行政が示しているのは、あくまでも「第一の道に従え」ということであり、従わないものは棄民とするという認識でしかない。

 28日の発表の席では、宮城県石巻市の住民が「地域検証委員会」のような「まちづくり復興協議会」は既にあり、行政の案に学者がオーケーを出し、住民に判を押させるものでしかないと指摘した。提言は科学者による「専門支援員」を提案しているが、復興政策に限らず様々な場で「学識経験者」とか「有識者」という人たちが行政の意向に沿った「答申」などを出し、批判や反対意見を封殺している。

 学術会議の提言を国や地方自治体は無視できないとしているが、役人は換骨奪胎の名人であり、今ある何チャラ委員会を「検証委員会」に名称変更し、学識経験者の大先生に「専門支援員」を依頼し「提言に沿って新しく組織替えしました」と言ってのけるだろうことは容易に想像できる。

 学術会議が現状を厳しく見ているのなら、行政に対し「第一の道」を全面的にご破算とし、新しく組織を作って一から復興策を練り直せと提言するべきだったと思う。今回の提言は分科会として示したが、上部の社会学委員会の査読を得た上、さらに学術会議として発表する承認を取ったものという。その分、弱い問題提起となったとしたら残念だ。

 

2014929日)