啄木鳥no.9

自民党に本当に明日はあるのか?

「大義」があるのか否かが、大きな問題になった総選挙がともかく終わった。あれだけ奇襲的に選挙を実施して、選挙戦が始まる前から結果は「自民大勝」とマスコミがはやし立て、2人に1人の低投票率だったにもかかわらず、自民党の獲得議席数は改選前から微減に終わった。

 毎日新聞と東京新聞を除く各紙は1215日付の朝刊に「自公大勝」の見出しをとったが、テレビ各局を恫喝した挙句、新聞を含めたマスコミを掌握して(東京新聞を除く?)の結果である。逆に言えば、これ以上の伸びしろはないということになるのではないだろうか?

 実際の得票数(速報値)をみると、惨敗して政権交代に追われた2009年の選挙で自民党が獲得した票数は小選挙区2730万票、比例区1881万票(投票率69.28%)。これに対して、今回の選挙では小選挙区2546万票、比例区1766万票(投票率52.66%)という。

 15日付け東京新聞朝刊に載った金井辰樹政治部長の分析によると、この比例代表での自民単独得票率は4割弱、投票率が5割を少し超える程度だったから、比例で「自民党」と書いた人は全有権者のわずか2割だったという結果であり、「消極的選択によってもたらされた勝利」と指摘している。

 一方で、前回選挙でマスコミが話題にした「第3極」の動きをみると、「維新の党」の結果は「維新の会」と「みんなの党」の合計と比較すれば大幅に減っており、第三極の中心になれないことは明らかになった。投票日前日に維新共同代表の橋下徹大阪市長が早々と「敗戦宣言」したのも、第3極構想が潰えたという考えなのだろう。

 評論家の古谷経衡さんが選挙後ネットに発表した論評によると、今回の選挙の「唯一の敗者は明らかに『次世代の党』だ」という。確かに分裂した「維新」と「みんな」がくっついた極右傾向の強い「次世代の党」だけが惨敗(19議席から2議席)した。その分が自民党、民主党の増加分と考えると分かりやすい。さらに反自民、極右への批判もあって共産党が飛躍したことは、それだけ国民の批判が募っていると見ることもできる。

 安倍首相は選挙前から「アベノミクスへの信認」を選挙の争点にし、あたかも選挙に自民党が大勝すれば経済が良くなるような幻想を振りまいたが、実際の経済指標は皆良くなる方向にはなっていない。金井東京新聞政治部長は、今回の選挙について「岐路になるテーマが争点化しない時期に選挙を設定したように思える」と、幻想がまもなく消えてしまう直前の選挙だったと示唆している。

 実際、内外の投資家によるとみられる株式の乱高下以外に、経済の目立った動きはみられない。来年早々には多品目の値上げが発表されており、他方で実収入が前年度を下回っている状況では、アベノミクスの破綻が現実化する可能性が強い。選挙のために、無理なことを次々やってしまったので、打ち出す弾も無くなりスタグフレーション、恐慌という悪夢もあり得ないことではない。

 そうなる前に手を打って総選挙をしたということなのだろうが、国会で圧倒的な多数を占めているだけに国民からの批判も強烈になるのは間違いない。マスコミを恫喝して従わせるだけでは、批判を抑えることは不可能ではないか。

 そうなって国民の中に不満が鬱積すると、最も心配なのは排外主義の勃興だ。今回の選挙では「ネトウヨ(ネット右翼)」という右翼が「次世代」を支持、特に田母神俊雄氏らを応援したというが、「次世代」候補は23の小選挙区ですべて最下位。供託金を没収される候補も24人に達したという。

 「ネトウヨ」有権者がどれだけいて、どの程度投票しているのかわからないが、先の古谷さんはネトウヨ票のかなりは安倍自民党に流れたとみている。現在の自民党内部には「在得会」やハーケンクロイツを掲げる団体とのツーショット写真を出している「ネオナチ」性向の強い議員が増えている。また安倍首相自身の言動には自民党右派というより、ネトウヨに近いと思わせるところが多々ある。しかしネトウヨやネオナチとどこまで一緒になれるか。右傾化すればするほど、公明党は与党を続けていられるのかを迫られることになる。また自民党内部も一本にまとまるのは難しくなっていくのではないだろうか。

 国民の間には、依然として「高度成長」という幻想が残っている。特に年配者に、その傾向が強い。しかし人口は減少し続け、国内消費は減る一方だ。円安で輸出企業の業績が上がると宣伝しているが、実際は日本企業の国際競争力は落ち続けている。ソニーの業績悪化がその典型だろう。どこまで国民の富を売り渡すのかが交渉内容と言わざるをえないTPP交渉もヤマ場を迎える。

 こうしてみると、安倍政権にとってプラス要因はほとんど見えてこない。これから野党に求められるのは、沖縄の知事選や小選挙区選挙にみられたような戦略的思考だろう。特に民主党は取りあえず下げ止まったのだから、内部対立を避けるという国民から遊離した姿勢を続けた海江田万里代表の落選をいい機会に、国民生活再建という観点に立って解党的出直すチャンスだ。