「啄木鳥」破綻の東芝が新たに英原発開発会社を100%子会社に

逃げた欧州からババを掴まされる原発開発

 

 既に1兆円を超す負債が見込まれ、破たんに瀕している東芝が4月4日、子会社の英原発会社ニュージェネレーション(ニュージェン)の株式のうち40%を仏電力会社エンジーから買い取り、100%子会社にすると発表した。取得費用は約153億円という。

東芝は3月30日、3時間に渡る臨時株主総会で、破綻した子会社の米原子力会社ウェスティングハウス(WH)に米破産法を申請させ原発開発から手を引くとともに、優良な半導体工場を分社・売却して危機を乗り越えると表明したばかりだった。株主総会を乗り越えた直後の、原発建設会社の100%子会社化発表。作為を感じるのは、私だけではないだろう。

▽粗っぽい戦略で買収

 完全子会社になるニュージェンは英国西部で新規原発建設を計画、エンジー(旧GDFスエズ)とスペインの多国籍電力会社「イベルドローラ」、英電力会社SSEの合弁会社として2009年に設立された。その後、SSEは手を引き、WHを通して東芝が2014年にイベルドローラから株式を取得。エンジーからも10%の株式を得て60%の子会社とし、セラフィールド近くで原子炉3基のムーアサイド原発開発を計画している。東芝によると「完全買収」はWH破綻に伴う同社とエンジーの契約によるものというが、買収がWHの危機対策から始まっている可能性が高いこと、東芝は今年初めまではニュージェンへの投資比率を下げると表明していたことなどを考えると、説明は全体に胡散臭い。

 さらに今年1月30日付の日刊工業新聞は「東芝、英原発事業見直し、機器の供給に特化」とする記事を掲載。その中でニュージェン買収は、東芝が当初関心を示していた同じ英国の原発開発会社ホライズン・ニュークリア・パワー(ホライズン)への出資を日立に取られて変更したもので、当初から粗っぽい戦略だったと指摘しており、一連の幹部による『暴走』の一環であるかと疑わせる。

▽韓国からの支援が頼り?

 4月5日付の日経新聞によると、東芝はニュージェンの100%子会社化による追加損失額は最大約500億円と見込んでおり、今後は韓国電力公社グループ(KEPCO)と交渉を進める意向という。その話を裏付けるように、ロイター通信は翌6日付のソウル電で、クラーク英ビジネス・エネルギー・産業戦略相が韓国を訪問しており、KEPCOと交渉中と伝えた。

 東芝はWHの破綻処理をめぐっても、KEPCOに株式譲渡して支援を求める意向を示しているようだが、そう簡単にいくのだろうか。KEPCOは韓国政府が過半数の株式を持つ半官半民会社である。韓国では間もなく大統領選挙が始まる。最有力と伝えられる野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補は原発開発に厳しい見方を表明している。KEPCOとしては選挙が終わるまでは政府の意向を考慮して、態度を示さない方針だろう。何より安倍晋三首相になってから日韓の関係は暗雲が垂れこめている状態だ。

 東芝の海外での原発開発が大きな問題となっているのは、原発輸出がアベノミクス成長戦略の「数少ない具体策」とみられているためだ。昨年12月、日本を訪問したクラーク産業戦略相と世耕弘成経済産業相は東芝と日立の英国における原発建設を促すために「新規原発建設で協力を強化する」との覚書を交わし、その際、日本政府は国際協力銀行(JBIC)、日本政策投資銀行などの政府系金融機関を通じて1兆円の支援を約束したと伝えられている。

▽欧州企業が逃げた後のババ掴みに

 日立が原発開発を進めようとしているホライズンは、原子力発電の新規建設から発電所の運営まで行うとして、2009年にドイツの電力会社が設立した。2020年代前半の稼働開始を目指し、英国内2カ所で改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)の建設を計画。日立は2012年約900億円で同社を買収して子会社としている。日米両国政府の覚書が示された昨年12月15日付けの日経新聞は、ホライズンの原発開発について「総事業費約2兆6千億円のうち、日立は約1割(約2600億円)を負担することを前提に交渉している」と伝えていた。

 

 日立は、用地取得などは順調に進んでいるとしているが、事業費など不明な点が多い。仮に日本の政府系金融機関が総額1兆円を負担するとしても、1兆円以上足りない。WHのように粉飾決算を繰り返すことは無理だろう。安倍政権にとっては、これに東芝の子会社ニュージェン・ムーアサイド原発開発資金問題が重なる。四苦八苦の東芝がさらに負債を雪だるま式に重ねていく未来図が絵に浮かぶ。はっきりしているのは、一部の利権にたかっているもの以外は、原発開発は経済的にも破滅の道に向かいかねないということだ。

ニュージェン、ホライズンとも最初に立ち上げた欧州の企業は、日本企業に売り抜けて逃げた。ババを引いているのは日本企業だけのようだが、救済のために血税を使うことだけは許されない。

(2017年4月7日)