「啄木鳥」日本は既に「昨日か一昨日」の産業国家?

台湾で感じた日台韓の激しい競争

 

正月休みを利用して、台湾に行ってきた。34日の小旅行で、なおかつ台北だけだったが、いろいろ目を見開かされることがあった。なかでも電車(MRT)や街頭などで目についたのがスマートフォン(スマホ)の隆盛と、ツイッターなどSNSによるチャットの普及ぶりだ。若い世代ではスマホは切っても話せぬ関係になっているのは世界で共通してみられることだが、高齢者それも女性の所有ぶりが目立つ。日本でも年配者がスマホを持つようになったが、同様に高齢の男性の方が使っている率が低そうというのも日本と台湾は似ている。

 スマホ全盛を示すように、台北では市中でのWifiもかなりのところで使える。このあたりは、さすがにIT大国と思わせる。喫茶店でも歩きながらでも、スマホから離れられなくなって来たのは世界的な傾向でもあり、米ハワイでは「歩きスマホ禁止の罰則」が設けられたと聞く。スマホ文化を支える台湾企業の隆盛をみていると、日本は既に「昨日か一昨日」の産業国家になっているのではないかと思えてくる。

 

▽世界トップ107社の中国企業

 スマホの第一号といえるアップルのiPhoneが世に出て昨年で10年という。この10年で、世の中がすっかり変わった。スマホは単なる携帯電話ではなく、小型カメラであり、超小型のパソコン(PC)でもある。PCを介していたメールも、スマホやタブレットで同じように見ることができる。ワードなどで文章を書くこともできる。ビジネスマンはいちいち会社に帰ってPCの前に座って作業しなくてもよい。写真も、カメラで撮影した画像をPCに取り込んでから送信という手間を掛けずに送ることができる。何と言っても利点はすぐに立ち上がることだ。ますます世界中で増加していくのではないか。

 世界で何社ぐらいが生産して、どのくらい出荷されているのだろうか。IT先進国の台湾でふと気になって調べた。

 少し前のものだが「IC Insight」という米国の調査会社がまとめたデータがある。2016年のスマホ出荷台数は世界で149000万台に達した。現在では15億台は超えているだろう。

 調査結果で重要な点は「メジャー企業」10社のうち7社が中国に本社をおいている企業で占められていることだ。世界1は毎年変わらず韓国のサムスン、2位は米国のアップルで変わらないが、3位に日本でも躍進著しい中国のファーウェイが付けている。昨年は一時、ファーウェイがアップルに僅差まで迫り、瞬間風速的には抜いたこともあったという。

 

▽日本メーカーはランクに登場せず

 トップ10のうち中国以外では7位に韓国のLGが入っているだけ。台湾メーカーも、日本に馴染みの深いASUS(エイスース)が14位にランクし追い上げている。だが、日本のメーカーは1社も登場していない。その他の約3億台の中に入っているらしいが、海外では既に名前を聞かなくなった。ちなみに3億台というのはサムスン1社よりも少ない。

 日本では「ガラケー」と呼ばれる従来型携帯が全盛だった2001年当時、携帯製造メーカーは11社あったという。しかし2017年になってスマホを製造しているメーカーはソニー、シャープ、京セラの3社だけになった(富士通は同年、スマホ事業の売却を決定した)。このうちシャープは台湾企業の鴻海精密工業に買収され「外資系電機メーカー」に分類されているので、純粋の日本企業は2社ともいえる。

 同じことがパソコン(PC)にもいえる。世界のPC市場は1位が米国のHP2位が中国のLenovo3位が米国のDell4位が台湾のASUS5位が米国のApple6位が台湾のacerとなっていて7位以下は「その他」扱い。ここでも日本のメーカーの名前は出てこない。日本の富士通は昨年11月、Lenovoにパソコン部門を売却したので、中国メーカーはさらにシェアを伸ばしていることだろう。

 

▽拍車をかける「インスタ映え」

 こうしてみると、PCに限っては、さすがに米国企業の底力は大したものと感心するが、中国、韓国、台湾3カ国企業の熾烈な競争が激化していることがよく分かる。スマホがPCに比べて優位なのは、通信回線やWifiで繋がっていれば、どこでもすぐに情報を入手できることだろう。ツイッターやラインでのチャットが中心になってきたことで、PC時代のメールも利用度が減っているという。それを象徴するように、アップルは昨年販売したiPhoneの新しい導入画面をチャットシーンにしている。台北でもおばちゃんたちが電車の中でチャットしていた。

 

 さらにスマホ普及に拍車をかけているのが、インスタグラムのような画像、動画投稿サイトだ。日本でも昨年の流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれたが、世界中で「インスタ映え」狙いの投稿が急増している。このインスタ映え写真を撮影する最大の武器がスマホであることは間違いない。一眼レフや「コンデジ」と言われるコンパクトデジタルカメラで撮影して、PCで加工して投稿してもいいだろうが、まだるっこしい。どうせなら、スマホで撮影して、ちょっと加工し、その場で投稿したほうが簡単だし、何より同時性という点で勝っている。

 

 こうした傾向を受けて、スマホメーカーはカメラ機能を強化しているが、中でも上位3社のサムソン、アップル、ファーウェイはレンズから撮影加工機能まで強化して、コンデジを凌ぐレベルに達しているという。アップルの資料によると、20161年間で世界中でiPhoneを使って1兆枚の写真が撮影されたと推測している。世界のiPhoneのシェアを3分の1と推定すると、世界中で年間2兆〜3兆枚もの写真がスマホで撮影されている計算になる。

 これは、かつてなかったことではないか。スマホだけで写真を撮るという人達が増えた結果、カメラを買う人が減り、ニコンは昨年中国のコンデジ工場の閉鎖に踏み切った。ニコンは今後、高価な一眼レフカメラにシフトしていくと発表している。

 

▽日本だけが異なる展開

一方、日本国内のスマホ出荷を見ると、世界的な潮流と極端に異なっている。まずアップル(全製品がiPhoneという)が約半数を占めているという異常な事態があり、その後にソニー、シャープ、富士通、京セラと続く(2016年段階)。サムソンや中国のメーカーのスマホは単独ではランクに上がっていない。

最大の理由は、ドコモ、au、ソフトバンクというキャリアがこうした国内メーカーの製品と紐つけて(SIMロック)売っていることだろうが、日本人の中に「国産信仰」も根強いためと推測される。

しかし、国産信仰者相手だけの商売が長続きするのだろうか。ここ数年、MOVOと呼ばれる3社から回線の一部(周波数)を借りて、自由に抜き差しできるSIM(フリーSIM)を使ってスマホを利用させる業者が急増している。こうした業者が採用しているのがファーウェイなど、キャリアと言われる電話会社3社と紐付けされていないスマホだ。

東京五輪では、海外から来る観光客にもスマホや携帯を利用させなければならない。海外からフリーSIMを搭載したスマホを持ってやってくる大勢の観光客が使えるようにしなければ、国際的な非難を浴びるのは間違いない。総務省もその点は分かっていて、フリーな環境醸成に躍起になっている。

圧倒的なネットワークを維持しているキャリア3社が、フリーSIMを受け入れた場合、SIMロックという紐付きで商売していた日本メーカーの優位性がなくなる。

その時、どうなるのだろう。日本の電機、電子産業もガラパゴス化というよりも、米国のラストベルトのようにラスト(錆)化するのではないか。ラスト・カントリーともいうことになる恐れが強い。

 日本の書店には、相も変わらず嫌韓反中のいかがわしげな本が山積みしているが、産業という視点から眺めてみると全く異なった光景が見えてくるに違いない。

 

2018120日)