「啄木鳥」

安倍自民党は本当に勝ったのか?

 第25回参議院選挙が終わった。NHKはいち早く「政権与党勝利」を見出しに大きく掲げて放送。読売新聞と毎日新聞も「自公勝利、改選過半数」を22日朝刊の主見出しに取った。しかし、安倍自民党は本当に勝ったのか。きちんと総括しているのだろうか。手にすることができたその他の新聞の朝刊見出しを見ると、各紙の力点や思惑が透けて見えて面白い。

▽見出しで違う朝日・東京と読売・毎日

 まず前記の毎日新聞。自公勝利の見出しに加えて「改憲3分の2に届かず」の見出し。読売は「自民1人区22勝10敗」となっている。これに対して朝日新聞は主見出し「自公改選過半数」だが、勝利とは打たず。続けて「改憲3分の2は届かず」「野党共闘1人区10勝」。東京新聞(共同通信とほぼ同じ)は主見出し「改憲勢力3分の2割る」に「自公改選過半数は確保」「1人区野党10勝22敗」。勝利とか敗北などの主観を排したのが日経新聞でで主見出し「与党が改選過半数」と「改憲勢力は3分の2割れ」「消費税増税へ経済政策」。驚くべきなのは産経新聞で大きく「改憲3分の2困難」と白抜き文字の横見出し。安倍晋三総裁率いる自民党単独の状況に触れたものは、読売の1人区情勢の見出しのみだ。ちなみに共同配信記事の2本目の見出しは「自公、改選過半数は確保」というもので、見出しだけからは自公与党が「勝った、勝った」という印象は感じられない。

 その共同は21日深夜、いち早く「自民、単独過半数割れ」という速報をしていた。22日夕刊用の記事では、さらに「自民57,単独過半数失う」との見出しで、選挙結果を分析している。それによると、自民は選挙前に66あった議席のうち9つを失い、57となった。改選議席は124だから過半数は63議席であり、過半数に満たないだけでなく、1割以上の議員を失ったことになる。自公両党併せた議席も71で改選前の77に届かなかった。常識的に考えれば「辛勝」で1割以上も議席を減らしたのだから、選挙責任者の責任問題になってもおかしくない。それが何となく「勝った」ことになるのは、忖度メディアの意図的な報道に他ならない。

▽改憲発議強行を阻止した投票行動

 そもそも今回の参議院選挙で最大の焦点になっていたのは、自公に維新を足した「改憲勢力」が改選前と同じく、非改選を含めた全参議院議員の3分の2を超え、熟議もなく「改憲の国会発議」を強行するか否か、その強行を許すかどうかだった。

 安倍首相は今回の選挙で、9条改憲を主眼とする改憲を主唱しており、3分の2を超えれば「国民は信任した」として、衆参両院で「発議」を強行してくる可能性があった。だから9条改憲をプッシュしている産経新聞は「困難」という主観的で強烈な見出しを打ったのに違いない。しかし参議院は解散がないので、少なくとも次の参院選挙まで3年間、発議を強行することはできない。

 現有議席を1割以上も減らし、本当に政権が安定するのに必要な単独過半数を割り込んだが、それでも「勝った」ふうができるのは、前回の参議院選挙での貯金と、異常な低投票率により基礎票で勝負する公明党の獲得議席数が堅調だったことが大きい。政権内で公明党の影響力が強まるのは間違いない。

▽かつて山本氏の党首討論参加を拒否したNHK

 しかし「風が吹かなかった」と主張している選挙のプロなる人たちが想像もつかなかったのは、山本太郎前参議院議員が立ち上げた「れいわ新選組」の一大旋風だろう。4月に設立して以来、ファンドレイジングで最終的に4億円以上もの寄付(それも、ほとんどが少額)を集め、10人の候補を擁立した。東京選挙区から比例区に回った今回の選挙で本人は落選したが、史上最高の得票数を得た。そして、これまで国会が事実上封鎖していた重度身障者へのドアを開けさせた。「れいわ」には茂木賢太郎氏ら多数の著名人も応援に駆けつけた。

 山本太郎氏について言えば、氏が率いていた「生活の党と山本太郎となかまたち」という党はかつて、国会議員5人という政党要件を満たしていながらNHKの政治討論番組から外され、玉城デニー議員(現・沖縄県知事)と一緒に厳重に抗議したことがあった。田中龍作ジャーナルの田中氏によると、山本氏らの抗議に対してNHKは公職選挙法第86条の1項、2項を持ち出し「国会議員5人以上」「直近の選挙で2%以上の得票」という条件の双方を満たす満たす必要があると述べながら、条件を満たす「生活の党」に対して「今回は7党のみ」「総合的な判断」を拒絶の理由にしたという。

 「風が吹かなかった」と言われる中で、これだけ日本中に旋風を巻き起こした「れいわ新選組」に対して、同じ対応をするとはよもや思えないが、NHKはどう出るのか。NHKへの批判を唯一の政策とする「MHKから国民を守る党」が比例区で当選を果たしたのも「大本営放送局」化が目立つNHKへの抗議が高まっている証拠だろう。参議院選挙の公示前から投票終了後まで、安倍晋三総裁の動向などは放送しながら、NHK初め地上波の放送局は「れいわ」を一切放送しなかった。このことは「れいわ」支持者だけでなく、多くの視聴者が知っている。東京新聞は21日付けの朝刊に8人の党首の顔を並列で並べた。同じことが党首討論でもできるのか。間もなく試される時が来る。