啄木鳥 世界的なエネルギーシフトの潮流に乗れるか

立民が示す「原発ゼロ基本法案」の行方

中央集権型から地方分権型のエネルギーに

 

横浜市で開催された立憲民主党の原発ゼロ基本法案タウンミーティング(TM)に行った。200人収容の会場はほぼ満員。城南信金顧問で、小泉純一郎、細川護熙両元首相らとつくった「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)会長の吉原毅氏と、小田原にある蒲鉾製造販売の老舗、鈴廣の鈴木悌介社長(エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議代表理事)が来賓として参加。それぞれ原発をゼロにして、再生エネルギーにシフトすることのメリットを訴えた。これに対応して、立民側も原発を一日も早く終わらせ、再生エネルギーにシフトすることの意義を経済面を中心に提示したのが特徴だった。

この提起は重要だ。原発の危険性を主体に脱原発の議論を始めると「将来のことなら分かるが、今のエネルギーをどうするのか」という反論が待っている。また電力エネルギーに占める原発の割合は現実的に1.4%に過ぎないと説明しても、今度は「原発を廃止したら、経済的に成り立たない」という意見が出てくる。

これに対して立民の提案は、再生エネルギーのコストと原発を維持するコストを比較して、再生エネルギーの方が実際に安くつくこと、世界の潮流は再生エネルギーにシフトしており、これ以上遅らせると日本は世界から置いてきぼりになってしまう、という論点を主眼に置いていた。

▽原自連に寄り添った基本法案

立憲民主党は今年初めに法案骨子をまとめたが、その後「政治は政治家のためのものでも政党のものでもない」とする枝野代表らの考えで、国民と一緒に議論し法案をまとめていくとして各地でTMを開催している。3月9日頃までに法案を国会に提出するとして期限が切られている中で、全12回のTMが予定され、私が参加したのは横浜ミーティングだった。

骨子は①原発稼働を速やかに停止し、原発ゼロ(廃炉決定)を実現②中長期的に電力が不足する場合のみ、極めて例外的に再稼働③原発の「国有化」も検討〜とし、原発ゼロを実現するための基本方針として、省エネルギーの徹底(2030年に2010年比電力消費の30%減)と再生可能エネルギーの最大限導入(2030年に電力の40%以上)を掲げた。また新増設は認めない、使用済み核燃料再処理と核燃料サイクル事業の中止、電力会社の廃炉支援と損失補填、立地地域への支援などをうたっている。

一方の原自連は「原発は極めて危険かつ高コストで重要性も失っている」とし、運転中の原発は直ちに停止し、停止中の原発は今後一切稼働させないと踏み込んでいた。

このため、立民の骨子に対して、各地のTMでは①全原発の停止時期があいまい②非常時の再稼働を認めたーなどの点に疑問が集中。何回のTMを経て最終的に明確にすることになった模様だ(2018年2月21日付け東京新聞)。

まず第一の点について、骨子では「すべての発電用原子炉を速やかに停止させる」とのみで、具体的な時期が示されていないため「運転中の原発は直ちに停止する」とした原自連の基本法案に比べてあいまいという指摘が相次いだことから、最終的には「法施行後5年以内に全原発の運転を停止」と具体的にした。

もう一つの「例外的な原発再稼働を認める場合」について、「原子力以外のエネルギー源を最大限に活用しても、なお電気の安定供給確保に支障を生じる場合」として、石油危機などを説明していたが、巨大な自然災害や戦争状態になった場合など非常時こそ原発の危険性が高まるとの指摘が多く、この部分をまるごと削除した。

一方「2030年時点の再生可能エネルギーによる発電割合を40%以上」としていた点については、条文では変えず「以上」の文言を残すことで、原自連の主張する「50%」に少しでも近づける、と説明している。

民主党政権時「エネルギー・環境に関する選択肢」として、脱原発への方策を示したが、原発新増設を否定せず、さらに青森県六ヶ所村の核燃料サイクルを推進する姿勢を示すなど、あいまいとの批判が浴びせられた。

立民の基本法はこれに対して、原発の新増設は認めないと明記。さらに核燃料サイクルの中心である再処理も認めないとすることで、民主党時代の提案が曖昧とされた批判に答えるものになっている。

ただ現在検討されているのは基本法案であり、法案が衆参両院で可決成立しても、実際に原発ゼロに持って行くのには、様々な法改正を行わなければならず、「原子力ムラ」の抵抗など困難が待ち受けるとみられる。

タウンミーティングで挨拶する吉原毅・原自連会長
タウンミーティングで挨拶する吉原毅・原自連会長

▽凄まじい勢いの中国エネルギーシフト

 今年1月「悪魔と結託してでも、直ちに全原発の廃止を法律で定めたい」と表明した原自連の小泉氏は、数年前から「原発には未来がない」「このままでは日本は世界から取り残される」と焦燥感をあらわにしていた。

 その焦燥感の一端が中国の動きに見て取れる。中国は元々太陽光パネルなどの生産では世界のトップにあるが、ここ数年、各地で風力発電所などを急速に増加。風力発電でも世界のトップに立った。こうした生かを受け、習近平主席は昨年10月の共産党大会で「エネルギー革命を起こす」と宣言。2050年までに自然エネルギーを全電力の8割に拡大させるとの国家目標を掲げた。

 太陽光パネルでは、ここ数年の製品高度化が目覚ましく、性能は世界でもトップ級。その上耐久性でも、設備寿命が40年にまで達するレベルになっているといわれる。これは原発の設備寿命に匹敵する。

 2017年11月10日付けの米ブルームバーグによると、中国では2010年以降クリーンエネルギー化が加速。2006年末には10メガワットに過ぎなかった風力発電は16年には15万メガワットを超えた。太陽光発電も2009年の30メガワットから16年末には4万2400メガワットに急成長している。

 中国の動きが世界の産業に影響を与え始めているのは、これだけではない。中国は自動車についても電気自動車(EV)化を強力に推し進めている。こうした動きをいち早く捕らえた、世界最速のEVを製造している米テスラ社はEVのトレーラーを開発し中国に売り込んでいる。日本では日産が中国でのEV自動車製造工場建設を表明したが、トヨタは「米国第一」を叫ぶトランプ米大統領の言うがままに米国での普通車生産を優先し、一歩遅れてしまった。

 中国はまた当面の措置として、世界からLNGの輸入を強化している。古くて、排ガスが問題になっている石炭火力に代わって、当面の策としてLNG火力に頼ることになるとみられる。

 重要なのは石炭火力に代わるものとして、原発に頼ろうとしていないことだ。太陽光発電所なら、需要が減ったならすぐに閉鎖してスクラップ化、後は別の用地に代えられる。しかし原発では廃炉となってからも、長い年月をかけて廃止措置を進めなければならない。その上、核のゴミの始末はついていない。そのコストを考えると、再生可能エネルギーへのシフトは超大国になるための必然と考えているのではないか。

▽ソーラー農業で産業革命も

 原自連や立憲民主の原発ゼロ基本法案に対して、産経新聞が1月14日付の社説で「亡国基本法案」「夢想の虚論」「これでは国が立ちゆかぬ」とこき下ろしたという。アベ友新聞だから、こうした見方と言うのは簡単だが、かなり多くの国民は、似た考えなのではないだろうか。

 原発は安いと政府が言うから安いだろうし、再生可能エネルギーは不安定と政府が言うから不安定なのだろう、と。原発の安全性についても、東電福島第一原発の事故は大変と思うが、自分たちには影響がないし、今後も自分だけは被害を受けることはないに違いないに違いない、等々。

 しかし、自然エネルギー・シフトは世界中で進んでいるだけでない。日本でも各地で試みられている。その一つが、千葉県匝瑳(そうさ)市で試みられている大型プロジェクト「ソーラーシェアリング」だ。立民TMでも紹介されていたが、他のメガソーラー発電所が開いた農地を借りたり、無理に林を潰してソーラーパネルを設置しているのに対し、匝瑳市の「シェアリング」は農地の上に太陽光パネルを張り、その下で通常の農業を行うものだ。農業従事者は売電収入をえるとともに、農業も継続できる。

 いろいろ試行錯誤が続けられているようだが、吉原氏は「日本の農地460万ヘクタールの上に太陽光パネルを張り、その下で農作業を行いながら空中で発電するソーラーシェアリングの技術を用いれば、日本の電力需要の10倍に当たる1840ギガワットの発電が可能」と話している。

 こうした再生可能エネルギーによるエネルギー・シフトが目指すものは、現在の中央集権的なエネルギー構造から地産地消の分散型エネルギーへの転換、大企業優先の産業構造から中小零細企業に光が当たる産業構造への転換である。立民と原自連の「原発ゼロ基本法」の意義は、ここに踏み込んだ点にあると言っていい。