中華民国総統府の興味深い展示(下)

「日の丸原発」はNO! 脱原発立国を目指す台湾

稼働ストップ集会のパネルが展示された総統府

2015年には原発ゼロに

 

 台北市の中心部にある中華民国総統府(日本統治時代の台湾総督府)は、少し西側にある中山堂(元・台北市公会堂)や北側にある台湾銀行総行と並んで、日本の台湾統治下の歴史的建造物として有名だ。総督府は1919年に竣工、45年まで日本による台湾支配の象徴だった。東京駅の設計者、辰野金吾が20世紀になって好んで用いた「辰野式」と呼ばれる様式を模したもので、設計者は長野宇平治。中央にそびえる高さ60メートルの塔が特徴だ(西澤康彦「植民地建築紀行〜満州・朝鮮・台湾を歩く」より)。戦後もしばらくは、この塔を凌ぐ建物はなかった。

 日本統治時代だけでなく、戒厳令が38年にわたって続いた蒋介石―蒋経国政権下でも、一般の人が立ち入ることはできなかった。しかし民主化された今日、入り口で申し込めば誰でも見学できる。日本人観光客には日本語の通訳もついてくれる。

 その展示の中で、日本の政府関係施設ではまず見ることはできないだろうと思われる展示を見つけた。最近の台湾の動きを示す展示の中にあった2013年3月9日の台湾電力第四原発ストップ、原子力エネルギー廃止を訴えた10万人を超す大集会とデモのパネルだ。

▽福島と同じメーカーの沸騰水型

台湾は2016年に脱原発を公約に掲げた民主進歩党の蔡英文氏が圧倒的な差をつけて総統に就任した後、翌17年1月に民進党が多数を占める立法院(議会)は電気事業法改正案を成立させ、アジアで最初に原発の全廃を決めた。その原動力となったのが2013年3月から何回も行われた大規模な第四原発稼働阻止デモだった。

 台湾は台湾電力という公営の電力会社が一手に行っており、現在4つの原子力発電所がある。うち現在稼働しているのは3カ所。それぞれのサイトには2基の原子炉があるが、計6基のうち3基は停止しており、3基が運転中だ。3基の原発による発電比率は14%程度とされる。

 台北市から東に約40キロと、「原発30キロ圏」からわずかに離れた新北市貢寮区に完成目前で建設が中止された原発がある。総統府の展示パネルに出ていた台湾電力第四原発だ。第四原発は、2基ある原子炉の圧力容器が1号機は日立製作所、2号機は東芝が建設。タービン発電機は両方とも三菱重工製で、地元では「日の丸原発」とも呼ばれている。特徴的なのは、両方とも水蒸気爆発事故を起こした東電福島第一原発と同じメーカーの沸騰水型原子炉であることだ。ちなみに他の6基も沸騰水型である。

総統府の展示パネルには「『終結核四、核電帰零』廃核大遊行」との表示があり、大集会の様子や、総統府をバックにデモ行進する組写真が出ている。当時の共同通信電によると、全島で22万人超が参加したという。

 台湾には3カ所の既存原発があるが、いずれも1987年7月の戒厳令解除前に着工、運転を開始している。第四原発も用地は戒厳令解除前に電力が取得していたが、民主化後に着工となった。1994年には是非に対する住民投票も行われたが建設は続き、97年に日本からの原発輸出に反対した日本製品ボイコット運動も展開されたが、建設は止まらなかった。

▽転機になった福島原発事故

 転機になったのは2011年3月11日の東日本大震災に伴う東電福島第一原発の爆発事故だった。この年には日立が建設していた第四原発1号機で、中央制御室がほぼ全焼するという火災事故も発生。国民に衝撃を与えた。

全国民の7割が稼働反対という世論を受けて、当時の馬英九総統(国民党)は1号機の稼働凍結、2号機の工事停止を表明。さらには2015年7月1日に正式に建設凍結を決めた。しかし脱原発という流れは変わらず、2016年の総統選挙と立法院選挙で、国民党は惨敗した。

 蔡英文政権は運転開始から40年を超す原発の稼働延長は行わないとしており、最初の廃炉は今年12月。1978年に運転を開始した第一原発からとなる。稼働中の原発のうち最も運転開始が遅い原発も2025年には40年を迎えるため、この時点で台湾では原発由来の電気はなくなる。建設凍結の第四原発も運転は不可能とみられているからだ。やはり「フクシマ」と同じメーカーの、同じ炉形式の原発ということが大きいだろう。

▽日本でも原発ゼロできるか

安倍政権は福島原発事故後も「成長戦略」と称して、海外への原発輸出を進めているが、日本の原発メーカーとして最初のケースだった台湾第四原発への輸出が頓挫する影響は少なくないだろう。台湾は地震国という点でも日本と同じという意識が高いが、地震国では日本が売り込んでいるトルコもおなじである。

台湾が原発ゼロを国会に当たる立法院で決めた時、揶揄する論調が多かった日本のマスコミの中で、東京新聞は2017年1月17日付け社説の中で次のように記載していた。

「台湾にあって、この国に欠けているもの。それは、福島に学ぶ心、民意を聞く耳、そしてその民意を受けて、国民の不安を解消し、命を守ろうとする政治の意思である」

立憲民主党は昨年の総選挙で脱原発を公約に掲げ、今年初めから「原発ゼロ基本法」の制定に向けて、タウンミーティングなどを始めている。小泉純一郎、細川護煕両元首相が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)も広く呼び掛けており、どこまで浸透するか。台湾の人たちに負けないよう、福島に学ぶことができるかどうか試されている。

(了)