「ツイッター選挙とテレビ選挙」(下)

ツイッターが立憲民主党選挙の主力に

影が薄かった連合など既成の組織

 

 10月2日、たった一人で記者会見して立憲民主党を立ち上げた枝野幸男氏。民放テレビは当初ほとんど黙殺するなど泡沫扱いだったが、逆にそれが幸いして、草の根から支持が広がった。大手マスコミがほとんど取り上げない中で、選挙運動の主力となったのがツイッターだった。

 立憲民主党がツイッターを立ち上げたのは公示1週間前の10月4日。数日間で自民党広報アカウントのフォロワー数を抜き、公示後にはあっという間に10万を超すフォロワー数に。その後、伸び率は落ちたが、投開票日直前には19万を突破した。

▽大手メディアも取り上げ

 こうした動きを大手メディアも報道せざるを得なくなった。20日付日経新聞は「立憲民主・共産、自民に迫る(ツイッターでは)」との記事を掲載した。これは全国でツイッターに投稿されたすべての「つぶやき」から党名に触れたものをみると、自民党が20万強、共産党も20万近く、結党間もない立憲民主党が一気に追い上げ、20万弱で共産党と2位争いをしているというNTTデータの調査。選挙終了後の調査では、23日に自民党は50万近いつぶやきで他党を圧倒。2位は立憲民主党で27万弱、3位は共産党で約20万だった。希望の党は23日には20万近く達したが、翌24日には半減したという(以上、24日付日経)。

 NHKも23日に「立民ツイッター投稿数、フォロワー数で他政党を上回る」とするニュースを報じた。フォロワー数では、立憲民主党は21日には19万を数えて他党を大きく引き離していたが、公式アカウントの投稿数でも「自民党が90件余り、希望の党が340件余り、共産党が310余りだったのに対して立憲民主党は570件余りと、ほかを引き離していました」と指摘。

 内容についても、「ツイッターで各地の枝野代表の演説予定やそこでの発言内容をきめ細かく投稿したほか、演説に集まった人にもハッシュタグを使って会場の写真の投稿を呼びかけていました」と伝えた。

 ソーシャルメディアが本格的に選挙に解禁されたのは2013年の参議院選挙からだった。毎日新聞は同年6月29日付朝刊で、立命館大学と共同調査した選挙直前の各党のSNS対応を報じた。記事は「立候補予定者ツイッター、自・共効果的に拡散」とのタイトルで、SNS選挙を提唱してきた自民党と、直ちに対応した共産党の発信が効果的に拡散している一方、民主党(当時)の発信に対する利用者の反応が鈍いことを報じていた。

▽優秀だった立民のツイッター・チーム

 今回、立憲民主党が群を抜いたSNS発信力を見せつけた一方、希望の党の見る影がなかったこと、自民と共産がこの分野でも実力を発揮していることなどを考えると、民主党や民進党の主力は2013年から成長してこなかったと感じる。これに対して、22日の投開票日深夜に記者会見した枝野代表は「政治に関心の薄い層に向けて短い言葉でメッセージを発信し、フォロワーの皆さんが自らの判断で活用していくという、いい環境が生まれた。ツイッターを担当してくれたチームが非常に優秀だったことも、効果を大きくした要因だと思う」と表明している。徒手空拳で選挙戦を闘わなければならなかったこと、そこに「非常に優秀なチーム」が参加したことで、これだけの大きなうねりを起こせたのだろう。

 立憲民主党の公式ツイッターでは選挙後「今回の選挙ではSNSを通じて多くの方々と一緒に歩んできました。アカウントを始める前から『枝野立て』というハッシュタグで励ましていただいたことは今後も忘れません」「沢山のボランティアにも参加していただきました。選挙が始まったころは寂しかった選挙事務所も、後半では電話掛けやチラシ配りのボランティアでいっぱいになりました」などと感謝の表明が綴られている。

▽連合が陰潜め、脱原発が表に

 昨年の米大統領選挙の民主党予備選挙で独立系のバーニー・サンダース候補が善戦していた頃、保守系の雑誌「WEDGE」に土方細秩子というジャーナリストが書いた『バーニー・サンダースという現象 アメリカに起きた革命』という記事が載った。当初は泡沫扱いされていたサンダース候補が予備選のライバルたちを抜き去り、あれよあれよという間にヒラリー候補の対抗馬になったころだ。この中で、土方はサンダースの集会に参加した若者の多くがこれまで政治に興味はなく、投票もしなかったと指摘。「自分たちを選挙集会に呼び寄せ、政治について真剣に考える機会を与えてくれたのがバーニーだ」と語る参加者の言葉を伝えている。

 立憲民主党の「○○大作戦」に集まり、各候補者の「助けて!」というツイッターでのアピールを受けて選挙事務所でちょいボラに参加した人たちのかなりが、昨年のサンダースの集会に参加した米国の若者と同じような意識にあったのではないかという気がする。

 立憲民主党各候補の選挙戦では、驚くほど労組の影は見えなかった。連合が何も発言できなかったからこそ、立憲民主党も希望の党も「脱原発」を大っぴらにアピールすることができたともいえる。今回、東京18区で当選した菅直人元首相は先日、国会前の脱原発集会であいさつに立ち「皆さんが公示当日(民進党の)各候補のところに行き、選挙ポスター貼りのボランティアをしていただければ、皆労組に遠慮せずに脱原発を掲げることができるんですよ」とアピールしていた。菅元首相の意思とは異なったが、結果として連合の居場所が消えたことになった。労働者の利益を守ることを謳っている連合がこれからどうするか、ここでも変化が出てきそうだ。

 ただ、ツイッターなどのソーシャルメディアにはフェイク(うそ)が必ず混ざってくる。テレビなど大手メディアが情報を独占して、操作する危険性をはらんでいるだけに、フェイクに注意しながら、どう拡散させていくかとの課題も残っている。

(了)