「ツイッター選挙とテレビ選挙」(上)

既成メディア利用策謀が裏目に出た小池百合子戦術

テレビという「空中戦」とデジタル「草の根」の闘い

 

 結果的に自民公明両党が3分の1を制し、希望の党や維新の会を含めた「改憲」勢力が圧勝した第48回衆議院選挙。しかし選挙で目立ったのは立憲民主党だった。小池百合子都知事が率いる新党は当初二、三十人規模と見られていたが、前原誠司民進党代表の「奇策」によって、民進党が全員合流した巨大政党になり、自公と政権選択選挙となるはずだった。しかし党代表になった小池氏がリベラル排除の論理を打ち出し、選別を始めたことから、民進党は分散。排除された枝野幸男氏は有権者に背中を押されてたった一人で立憲民主党を立ち上げた。

 この結果目立ったのが、テレビという巨大メディアによる「空中戦」選挙か、ツイッター主体の「草の根」選挙かだったのではないだろうか。自民党が圧勝したのも、野党分裂に助けられた面は多々あっただろうが、草の根選挙によるところが大きい。これからは自民党的アナログ草の根か、立憲民主党的デジタル草の根か、それぞれの選挙戦が注目される。

 

▽テレビ・ジャック

 小池氏が希望の党を立ち上げたのは9月27日。同時に民進党は前原代表に一任する形で希望に合流を決定した。28日の冒頭解散の前日であり、民進党はこのままではじり貧とされていたので、前原奇策は一つの考え方としては十分あり得た。

 しかし小池「排除」路線がすべてを潰した。前原が「名を捨てて実をとる」と表明して、民進党の衆議院議員で立候補を予定していた全員が希望の党の公認候補になるとみていたのに対し、小池は平然と「そんなことは、さらさらありません」と言明。さらには有名な「排除します」の決定的な台詞が全国に流れた。この言葉を「ちょっときつめ」なトーンだったという言い訳は通用しないことが、その後の選挙戦で明らかになった。

 政権選択選挙と表明しながら、自ら国政に打って出るのかについては曖昧作戦に終始。テレビ・ジャックのように朝から晩までテレビ露出を続ける一方、立ち上がった立憲民主党候補には「刺客を立てる」と言明。この間、民進党から転身する候補に対しては、高額な寄付金を要求しつつ、まだ作ってもいない公約や、憲法九条改憲や集団的自衛権容認に従わせる誓約書など「踏み絵を踏ませる」高圧的な態度を示して国民に嫌悪感を与えることになった。

 

▽「選挙はテレビがやってくれる」

 公示前の10月5日付朝日新聞に掲載された希望の党比例九州ブロック候補、中山成彬へのインタビュー記事で、中山は「希望の衆院選の進め方について、(中山に)『選挙はテレビがやってくれるのよ』と話していた」と語る記事を掲載した。ちなみにこの記事のタイトルは「希望の中山成彬氏『思想チェックしている』候補選びで」。端から排除の論理が働いていたことを物語っている。

 こうした「小池劇場」をつぶさに見ると、希望の党の敗因は小池代表が「鉄の天井にぶち当たった」のではなく、傲慢さが招いた自滅でしかなかったことが分かる。問題は、小池代表だけではない。235人の立候補者のほとんどが「小池人気」をあてにして、地道な選挙戦を行っていなかったとしか考えられない。

 公示前は「小池劇場」一色だった民放テレビのワイドショー。「公示されたら公正に報道しなければなりませんからね」と政治評論家の田崎史郎時事通信編集委員にが言うように、公示後は小池劇場色が少なくなった。代わって出てきたのが「小泉進次郎祭り」と「女の闘い」。安倍晋三首相は当初、民衆が怖かったのか、公示日の第一声は福島市郊外の農道が一本通っているだけの空き地。報道陣と警官隊、集められた聴衆が3分の1ずつという「テレビ画面の中」だけに向けた街頭宣伝だった。しかし自民党幹部が言うように「一番不人気の安倍さんの脇を小池さんが抜いて不人気のトップになった」ことが分かるや、各地で「ステルス作戦」を展開し、選挙戦最終日の21日には因縁の秋葉原で、警官隊と動員かけられた中小企業主らの前で昨年の東京都議選の「リベンジを果たし」た。小池陣営としては、テレビ選挙がすっかり裏目に出てしまったようだ。

(続く)