コラムno.15

小児甲状腺がんの「異常多発」 今後は首都圏などでも様々な健康被害判明の可能性

 横浜市で11日開催された神奈川県保険医協会主催の市民講演会で、大阪在住の小児科医で医療問題研究会として東電福島第一原発事故で被ばくした子どもたちの健康調査を続けている高松勇医師が「小児甲状腺がんの異常多発と健康被害の現状」と題して講演した。

 

 高松医師によると、福島県が認めた小児甲状腺がん(疑い例含む)は今年8月末現在で103例。1700人から2000人に1人の割合となり、国立がんセンターの全体的なデータである10万人に0.5人に比べても極めて多く、福島県が認めただけのデータであっても異常多発といえると指摘。

 

 福島県と福島県立医科大学はこれまで一貫して小児甲状腺がんについて「たいしたことではない」という姿勢をとり続けているが、その中心人物である鈴木真一・福島県立医大教授は一方で828日に日本癌治療学会でこのうち54人の手術を行ったと発表。「すぐに手術が必要だった」と従来の主張と矛盾した報告をしている。しかし学会員以外には説明もなく「患者隠し」を継続。重要なインフォームドコンセントを行ったか否かも明らかにしていないと、高松医師は批判。福島県の手術実施率が極めて高いにもかかわらず情報公開の姿勢がないことなどが、県民の県当局への不信に結びついているという。

 

 旧ソ連チェルノブイリ原発事故でも、被ばく者は甲状腺がん以外に様々な疾患に見舞われたが、高松医師によると福島県双葉町が2012年に実施した約8000人に対する疫学調査でも同様のことが分かるという。この調査は広域避難した双葉町民と、福島県に隣接し放射能で被ばくしたが避難していない宮城県丸森町、それに放射能と全く関係がないとみられる滋賀県木之本町とを比較し、20歳以上を対象に体の不調や発症した病気などを調査したもの。調査によると、「鼻血」「吐き気」「疲れやすい」などについて双葉町民と丸森町民は木之本町民に比べ高い比率で訴え、その比率も2つの町はほぼ同程度だったという。また狭心症・心筋梗塞、アレルギー鼻炎などの病気も同じように木之本町民に比べ際だった差が出たと報告している。漫画「美味しんぼ」で鼻血シーンが物議を呼んだが、調査結果を見るとかなり多くの住民が鼻血を訴えていたことが分かる。

 問題は、双葉町民は原発から全村避難したのに対し、丸森町民は避難していないだけでなく、きちんとしたスクリーニングも行われているのがあいまいなことだ。

 高松医師によると、航空機モニタリングによる地表面セシウム沈着量調査で①群馬県、栃木県の北半分、埼玉県と東京都の一部②茨城県の南部と北部、千葉県の北部③宮城県の南部と北部、岩手県や新潟県の一部-では被ばく線量が1平方メートルあたり4万ベクレルをと超えており、チェルノブイリ原発事故後作成された「チェルノブイリ法」で旧ソ連が「汚染地域」に指定した1平方キロあたり1キュリー(1平方メートルあたり約37000ベクレル)を上回っているという。

 この「汚染地域」は2万平方キロメートルにおよび、首都圏を含む地域内では約2000万人が生活している。集団の被害を考える「集団積算線量」および「集団実効線量」という基準によれば、福島県中通りの10分の1の被曝量であっても人口が10倍になれば発生する健康被害は変わらないので、汚染地域の2000万人にも甲状腺がんだけでなく様々な健康被害が発生する恐れが出てくることになるという。

 

 原発の被ばくは福島県民だけの問題として、自分たちは関係ないと無関心だったり、福島県民を差別する風潮が増しているが、高松医師は「今後様々な健康被害が出てくる恐れは、福島よりも県外、特に首都圏の人の方が多い」と指摘。少なくとも「汚染地域」に住む人びとは行政にスクリーニング調査を求めるとともに、福島県や県立医大に情報公開を求めていくことが重要と話している。

20141011日)