コラム


火山噴火の原発へのリスク判断で、またぞろ「想定外」作りか

想定したくないものは、想定しない。想定の対象外なのだから、問題点を考慮しようとする人を排除する。そんな、東日本大震災で明らかになった問題がまた繰り返されようとしているのではないか。原子力発電所への巨大火山噴火の影響をめぐる議論をみていると「想定外」作りの危険性をひしひしと感じざるを得ない。

▼火山噴火のリスク

鹿児島県にある川内原発の再稼働を巡る動きがそれだ。再稼働を目指す全国の原発のうち、川内原発の審査は最も進んでおり、最初に再稼働が認可されるのではないかと言われている。しかし毎日新聞が昨年1222日付け紙面で報じた全国の火山学者に対するアンケート調査では、巨大噴火の影響を受ける恐れがある原発はどこかとの問いに回答した50人の火山学者のうち、29人が川内原発をあげた。2位は北海道の泊原発だった(25人)。川内原発の周辺には阿蘇火山(熊本県)や姶良火山(鹿児島県)など巨大噴火によるカルデラがある。いつ巨大噴火するか正確な予知ができない以上「再稼働させるべきではない」と回答した火山学者は19人に達したと毎日新聞は報じている。

しかし世間の関心は低い。このため日本火山学会は原子力問題対応委員会を設置し、429日に初会合を開いたと報じられたが、内容はつまびらかではない。また翌30日には市民団体と原子力規制庁との交渉もあったようだが、この席で規制庁担当者は「専門家から意見を聞く予定はない」と回答したという。「原子力ムラ」はまたぞろ毎日新聞のアンケートに応じた専門家の危惧を無視するのではないかと考えざるを得ない。

そんな中、専門家の一人とみられる静岡大学防災総合センターの小山真人教授が430日付の静岡新聞「時評」で、「火山リスク過小評価」と題して原発安全審査への疑問を投げかけている。

原子力規制委員会は昨年4月「原子力発電所の火山影響調査ガイドライン」を発表したが、小山教授はこのガイドラインを受けた川内原発の審査に対して「原発に被害を与えそうな巨大噴火の発生可能性が十分小さい上に、それがモニタリング(機器観測)によって予知可能とされた件に異を唱えたい」と主張している。

小山教授によると、「発生可能性が十分小さい」とする判断基準は曖昧かつ恣意的である上、12万~13万年前以降に動いた活断層上への原発設置を不適とするなら、同じ時間内に火砕流が届いた場所もダメとしなければつじつまが合わないだろうと指摘する。しかし原子力規制委からは、こうした判断に対する明確な回答は示されていない。

さらに小山教授は「噴火の規模を、噴火の前や開始直後に知る技術はまだない」と断言している。「本当に観測で予知可能かどうかは、素人判断せずに火山噴火予知連絡会に諮問してほしい」と小山教授は結んでいるが、これは大変なことだ。原子力規制委は火山噴火の影響を検討する上で、火山学会や予知連と綿密な協議をしていないことを示しているからだ。

▼曖昧な噴火時の核燃料処理

摂氏1000度にも達するといわれる火砕流が押し寄せたら、どんな原子力発電所も崩壊せざるを得ない。火砕流堆積物は原子炉だけでなく、周囲の施設を覆い尽くし、むき出しになった核燃料から放出される放射性物質は長期にわたって地球規模で環境を破壊し続けることは想像に難くない。被害の大きさ、影響の度合いは地震津波の比ではないことが分かる。

 にもかかわらず、規制委の田中俊一委員長はモニタリングで噴火を予知し、核燃料を運び出すので大丈夫との趣旨の発言をしている。かなりの精度で噴火を予知した北海道の有珠山、あるいは全島避難に成功した伊豆大島や三宅島を念頭に置いているのかもしれないが、住民の避難と同じように短期間で核燃料を取り出して運び出せるのだろうか。

 424日の衆議院原子力問題特別委員会での田中委員長と結いの党の椎名毅議員とのやり取りがyoutubeなどで紹介されている。

その中で田中委員長は火砕流が直接押し寄せて人が存在できないような状況が予測される場合は立地不適当と判断。30センチ程度の火山灰が降り積もった場合は重要機器とか構造物とかが耐えられるかの評価をした上で認める、とする基準があるかのような答弁をした。

さらに破局的噴火は9万年に1回ぐらい起きる。川内に近い火山では姶良火山の噴火が3万年前に起きており、「そういうことを踏まえて、今回は川内原発を認めております」とあたかも、数万年間は噴火が起きないかのような発言をした上、「兆候が見える時には即座に判断して原子炉を止め、使用済燃料の始末をするというようなことを含めて審査中です」としている。

 この国会審議の様子では、田中委員長は東電福島第一原発で3基の発電中の原子炉が水蒸気爆発を起こし、メルトダウンしている原因についての「原子力ムラ」の公式見解も覚えていないと言わざるを得ない。それとも公式見解は変わってしまったのか。

 福島では地震によって外部からの電源が止まり、さらに津波で非常用のディーゼル発電機も水に浸かって動かなくなったため、炉心を冷却するポンプを動かすことができず、沸騰した水が水蒸気となって爆発したはずだ。火山灰が一帯を30センチも積もる状態で、外部電源や非常用電源、さらには冷却用の水源の確保ができると思っているのだろうか。

 その上で、「使用済燃料の始末」という意味も不明だ。田仲委員長は別の機会で「核燃料を運び出す」と表明しているので、同じ意味だと思うが、原子力施設の中にある核燃料を運び出すのにいったいどの程度の時間がかかるのだろうか。川内原発には約900トンの核燃料があるといわれている。使用済核燃料と使用前核燃料はプールの中にあるが、使用済燃料は原子炉から取り出した直後は高温のため、温度が一定のレベルに下がるまでプールで保管しておかなければならない。いざというとき、どうやって取り出すのか。プールに入っている核燃料はまだいい。原子炉内の「燃えている」核燃料をどうするのか。放置してしまえばメルトダウンは間違いない。

 規制委員会はこうした「核燃料の始末」について、原子炉とプールからの取り出し方法、取り出しにかかる時間、どこに運ぶのかという明細を国民に公表する義務がある。本気で再稼働というならば、取り出し方法から輸送、搬出先の安全確保に至るガイドラインも最低限、再稼働前に作成しなければ、「想定外」と言ってごまかすことは不可能だ。

▼再稼働なくてもリスク

 川内原発の再稼働審査は火山噴火が原発に及ぼす危険性を顕在化させたが、この問題が恐ろしいのは「再稼働しなければリスクはない」とはならないことだ。現在ストップしている全国の原発では大量の核燃料がプールに入っている。水のなくなったプールにある使用済核燃料が起こす爆発的な核分裂の恐怖は、福島第一原発4号機でプールを支えるのに必死だったことからも明らかだろう。

 最終的に廃炉するにしても、抜き出した核燃料の保管をどうするか、巨大地震の恐れがあるところだけでなく、火山噴火の影響がありそうなところも保管場所として不適だ。取りあえず中間貯蔵であっても、核燃料の処分先が決まらないうちに再稼働するということは、「始末」できないまま核のゴミをさらに際限なく作り出すということに他ならない。

 それにつけても、先の国会審議でのやり取りにはあ然とさせられる。田中委員長の答弁を受けた椎名議員は「これから6万年はおそらく(巨大火山噴火は)来ないだろうと思う、来たとしてもモニタリングでチェックしているので大丈夫という説明をすると(安心感が)違う」として、田中委員長に基準の中に盛り込むよう求めた。誰でも9万年に1回という確率論は、9万年ごとに起きるという意味ではないことは常識で分かっている。椎名議員も当然分かっており、「6万年間は大丈夫」という基準を本気で求めたのではないだろう。

むしろ、こうしたレトリックのごまかしで、再稼働促進を狙っているのではないか。というのも「川内原発の運用期間中の巨大地震発生の可能性は小さい」とする九州電力の宣伝も、同じレトリックのごまかしでしかない。6万年間は火山噴火しないので対策は必要ないとしたら、原子力ムラは福島事故に対して何らの反省もしていないことを証明するものだ。

201451日)